100年後の未来、どう予測?100年前の人たちが想像した「今の日本の社会」とは

#健康 #人生100年

リンダ・グラットンさんの著書『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)――100年時代の人生戦略』がベストセラーとなり、「人生100年時代」が最近のトレンドワードになっています。
とてつもないスピードで世の中が変わろうとしている今、100年先の未来がどうなっているかを予測するのは困難に感じる人も多いのでは。
今回は未来予測のヒントを求めて、100年前の雑誌の特集をひも解いてみました。当時の人たちは「100年後の未来」、つまり今の私たちが暮らす時代がどんな世の中になると予測していたのでしょうか。

100年前の雑誌が予測した日本の社会

今から100年前といえば、ちょうど大正から昭和へと時代が移り変わろうとしていた激動の時代です。
イギリスで起こった産業革命以来、日進月歩で世の中が大きく変わっていきました。AI、ロボット、IoTなどの先進技術で社会が変わろうとする現在の状況とよく似ています。
当時の人たちは100年後の未来をどう予測していたのでしょうか。それを知る手がかりの一つが、政教社が発行していた『日本及日本人』という言論雑誌です。1920年4月増刊号の特集「百年後の日本」では、当時の著名人、文化人250名に「100年後の日本」について大々的なアンケートを実施。当時から数えて100年後、東京五輪が開催される2020年の日本の社会を予想しています。

「日本及日本人」の特集で使用された挿絵。100年後は空を飛ぶ「空中警察」が登場すると描かれています。

「日本人口は2億6千万人」になると予測した政府関係者

まずご紹介するのは、100年後の日本人口と米の需給量を予測した当時の政府の山林局長だった鶴見左吉雄の「消費米二億七千百萬石」という記事です。
100年後は人口増加によって米の需給がひっ迫するだろうという内容で「人口千人につき十五人弱が増加しているため、このままいけば100年後の日本の人口は約2億6千万人になる」と試算しています。しかし、現在の人口はその約半分の1億3千万人。今にしてみればうらやましい限りの人口増加率ですが、日本が少子高齢化という問題に直面しているとは山林局長も想像できなかったのかもしれません。

国の支出の半分が教育費!

当時の早稲田大学の帆足理一郎教授は、「国費の過半は教育費になる」と予測。教育の自由化によって国民すべてが大学教育まで受けられるようになるため、国の支出の大半が教育費になると主張しています。総務省統計局の「日本の統計2017」によれば、高校卒業者の大学などへの進学率は男子が52.1%、女子が56.9%で、当時からみれば進学率は高いといえますが、現在の日本の財政課題は教育費ではなく、医療や福祉にかかる「社会保障費」。名門大学の教授でもやはり少子高齢化社会の到来を予測することは難かったようです。

漢字は廃止、「英語」が公用語に!

「日本では漢字が廃止され、公用語に英語が採用される」と大胆な予測をしたのが国民英学会長の磯辺弥一郎です。世界が欧米を中心とした社会へと変わっていこうとしていた当時、英語は国際語としての地位を築き始めていました。磯辺は「(100年後は)漢字は全く廃せられ、英語が第二の國語と爲(な)るべし。これだけは地球大の印を捺して保証することができる」と予測に絶対の自信をみせています。
しかし現在は、英語は日本の公用語とまではなっていませんが、社内公用語とする企業は登場しています。インターネットで世界中につながる今、英語は必須のスキルとなっています。年間2,000万人以上の外国人観光客が訪れている日本でも、英語力の向上は今後いっそう求められそうです。

太陽光エネルギーの「貯電」が実現

太陽光パネルで発電した電力を貯めておける時代はくるのか

100年後の未来には、太陽光エネルギーを活用して発電し、その電力を貯めておく「貯電」ができるようになっているという記事を書いたのは、当時の土木学者で現在の工学院大学の学長を務めた石橋絢彦。
この未来予測はかなり的中しています。ソーラーパネルによる太陽光発電はすでに実用化され、自然エネルギーによる電力の蓄電技術の研究や実証実験も行われていますが、貯電が可能な社会の到来はまだもう少し先のことになりそうです。
この他にも、貯水式水電(ダム)による水力発電や風力発電、資源の枯渇も予測しており、その先見の明には驚かされます。

地球、火星間の通信が可能に!

火星探査は、人類が実現したい夢の一つですが、読売新聞社の記者だった柴田勝衛は「地球と火星との交通」という記事で「無線電話の発達は、地球と火星との交通(通信)を拓くかも知れません」と書いています。
日本と世界の都市を結ぶ国際電話もなかった当時、無線電話は夢の通信技術でした。通信の発達が火星への道を拓くという予測はあながち間違いではないかもしれません。

科学雑誌が予測した奇想天外な100年後の未来

「100年後の世界」を特集した1927年当時の『科学画報』の表紙

さらに、「日本乃日本人」の他にも、誠文堂新光社が発行していた科学雑誌『科学画報』の1927年1月号で「百年後の世界」という特集が組まれていました。
特集では、100年後の科学画報がどうなっているかについて、編集部が大胆かつ奇抜な予測を披露しています。

科学画報が想像した「離心電波」による100年後の編集会議の様子を描いた挿絵

雑誌の代わりに「畜音畜影装置」で発行

100年後には紙媒体はなくなり、科学画報自体も雑誌ではなく「畜音畜影装置」を使って発行されていると予測。
これは現在のインターネットの動画ニュースやデジタルマガジンなどですでに実現しています。しかし、今のところ紙の雑誌もまだまだ健在です。とはいえ、今後デジタルメディアが発達すれば、科学画報の予測通りになる日がやってくるかもしれません。

「3Dホログラム」の編集会議

また、100年後には編集会議はいちいち会議室に集まらずに世界各地から「離身電波」によって参加するシステムに変わっていると予測しています。これは参加者本人の姿を投影する「離身像」同士で、会議を進めるものだそうです。
この離心電波に最も近いのは、現在実用化が目指されている「5Gネットワーク」や「3Dホログラム」の技術ではないでしょうか。
この会議システムが実現して、世界のどこにいても、会議にバーチャルに参加できるようになれば、働き方改革も一気に進むかもしれません。


100年前の人たちの想像力にあふれる日本の社会や科学技術の未来予測、いかがでしたか。
100年先を正確に予想することは難しいですが、今の状況をもとに、未来の生活を想像することは楽しく、大切なものだとわかりますね。100年後の日本の未来、皆さんはどう予測しますか。

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