20歳がピーク!?脳の司令塔「前頭前野」の働き

2023年12月28日 | 健康のこと -Health-

人間の脳は「大脳」「小脳」「脳幹」と、大きく3つに分かれています。その内、全体の80％を占めているのが、大脳です。
大脳は、「前頭葉」「頭頂葉」「側頭葉」「後頭葉」の4つの領域に分かれています。
そのうちの「前頭葉」の大部分を占めているのが、「前頭前野」です。
それぞれの領域が司っている働きは、以下の通りです。

・前頭葉（前頭前野）：思考、判断、行動や感情のコントロール、コミュニケーション、記憶、集中、応用する、やる気を出す
・頭頂葉：知覚や痛覚などの体の感覚を認識する、動作のコントロール
・側頭葉：聴覚、視覚、言語を認識する
・後頭葉：視覚

人間の脳の最大の特徴といえるのが、「前頭前野」です。他の動物と比べて発達しており、人間らしい高次な機能のほとんどを担っている、重要な脳の部位です。
創造力を働かせてアイデアを出したり、感情をコントロールして理性的な言動を保ったり、大事なことに集中するといった働きは、すべて前頭前野が担っているのです。
いわば、人間らしさのすべては、前頭前野がカギを握っていると考えていいでしょう。

前頭前野の働きは、およそ20歳前後でピークを迎え、加齢とともに低下していくことが分かっています。「なんだか物覚えが悪くなったなあ」「物忘れが増えた…」と感じたら、それは前頭前野の衰え。衰えは急にはじまったのではなく、20歳から少しずつ、気が付かないうちに進んでいたのが、実感として現れてきたということでしょう。
衰えがどんどん進み、生活に支障が出てくるのが「認知症」というわけです。

前頭前野の衰えは、何もしなければ加齢するにしたがって右肩下がりでどんどん進みます。しかし、いくつになっても、前頭前野を鍛え上げることで、衰えをゆるやかにする…あわよくば横ばいにすることは可能です。
例えば、記憶したり、簡単な計算をする脳トレを行うことで、前頭前野が活発化し、脳の体積が増えて認知機能が向上することは、数々の研究・実験ですでに明らかにされています。それは高齢者でも、さらに認知症患者でも確認されています。

放っておけば、年々衰えていく。でも、鍛えることでいくつになっても蘇る――脳は、筋肉と同じです。使えば使うほど、鍛えてその機能をよみがえらせたり、保つことができると考えてください。
前頭前野のピークは20代で後は脳トレをしても緩やかに下降していくことになりますが、知恵や知識のピークは60～80代でピークを迎えるといわれています。前頭前野の機能低下をこの知恵や知識で補強していくことで、歳をとるほどより高次な脳に育てていくことになります。

いつまでも人間が人間らしくあるためには、前頭前野を鍛えること。そのためには生涯を通して浴びるように学習をし、人と交流をして、自分で自分の身の回りのことを丁寧に行うこと。たっぷりと睡眠をとり、体を動かし、バランスの良い食事をとること。それらが複合的に作用して、歳をとるほどよりよい脳になるのです。

川島隆太
株式会社NeU取締役 CTO、脳科学研究者

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