「認知症」になる、ならないを決定的に分ける、ライフスタイルと時期とは？

2023年12月28日 | 健康のこと -Health-

もの忘れが増えてきたり、新しいことが覚えられなくなってくると、「脳が衰えてきたのかも…」と不安になるものです。それは、その先にやってくるかもしれない、認知症を意識するからでしょう。
認知症はその名の通り、認知機能の低下から日常生活が困難になる状態のことです。認知症は人間の老化によって発症するもので、すべての人が漏れなくいつかは認知症になるでしょう。75歳～79歳は約6人に1人、85歳～90歳の約2人に1人は認知症というデータ（「日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究」平成26年度厚生労働科学研究費補助金特別研究事業より算出）からもわかるように、寿命が尽きるのが早いか、認知症になるのが早いかというわけです。

そして、認知症の前段階といわれているのが「軽度認知障害（MCI【Mild Cognitive Impairment】」です。記憶力や注意力の低下などがあるけれども、生活に支障はない状態をいいます。MCIの人の約半数が5年以内に認知症になるといわれているため、この初期段階でいかに認知機能を保つかが、大変重要となります。
60歳を超えて、同年代と比べてもの忘れが多い、もしくは人からそう指摘されることが増えたら、すぐに対策をスタートしましょう。
とはいえ、もの忘れは誰にでもあるものですから、その判断に迷う人も多いことでしょう。たとえば、朝ごはんに「何を食べたのかを忘れる」のは、通常のもの忘れです。対して、「食べたこと自体を忘れる」のが認知症の特徴なのです。しかも、もの忘れの自覚が通常ならばありますが、認知症になると自覚も失われてしまいます。MCIの段階では、忘れたという自覚は残っているため、日常生活にさほどの支障がないといえます。

認知症は突然発症するのではなく、40～50代の中年期頃から自覚症状のないまま進行し、20～30年後に発症します。そのため中年期からの予防が有効と考えてください。
病気の予防は、生活習慣などを改める「一次予防」、早期発見、早期治療で進行を止める「二次予防」、機能維持や悪化防止を目指す「三次予防」の三段階があります。ただし、認知症はいまだ、治療方法が確立されていないため、完治させることが難しい病気です。そのため、進行を遅らせることができたとしても、完治は難しいのが現状です。このため認知症の場合は、「一次予防」が非常に重要なのです。

つまり、40～50代の中年期の「一次予防」が、65歳以降の脳の若さを保つ、最重要時期であると考えてください。この時期に、認知症リスクを高める高血圧や糖尿病や肥満などにならないために、体をよく動かし、バランスの良い食事をして、しっかり睡眠をとるといった、基本的な生活習慣を改めて確立させていきましょう。
そして、処理能力や記憶力を鍛える脳トレドリルをしたり、音読で新聞を読んだり、大いに読書をするなどで、脳をたくさん鍛えてください。たくさんの人と交流して会話をしたり、料理をしたりするのも、有効です。
一次予防の時期の過ごし方が、人生100年時代を支える脳の質を左右します。

川島隆太
株式会社NeU取締役 CTO、脳科学研究者

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