2019年3月20日 | 健康のこと -Health-
「食事」は私たちが生きていくために欠かせないものです。しかし、今当たり前に食べている目の前の食料が、将来消えるかもしれない事実をご存じでしょうか。
自分の体を作り、毎日を豊かな気持ちで満たしてくれる食事をこれからもずっと楽しむために、私たち一人ひとりが知っておくべきこととは?世界が直面する食料危機の現実と、未来を切り開く食の新たな試みを、フードジャーナリストの佐々木ひろこさんのお話を通してご紹介します。
日本では現在、少子化に伴う人口減少が問題となっていますが、世界に目を向けると、逆に人口増加が深刻な問題として注目を集めています。2050年の世界人口は98億人に上ると見込まれ、水とタンパク質が不足する時代の到来は確実といわれています。人類にとって非常に大切なこの2つの資源が枯渇する理由を、佐々木さんはこう語ります。
「まず水の不足です。飲み水となるきれいな真水は地球上に限りがあるため、人口増加に伴って足りなくなることが予想されます。さらに世界各地で起こっている砂漠化が、水不足に拍車をかけています。気候変動によって干ばつに悩む国が増え、さらに過剰な木の伐採や開墾耕作、家畜の放牧により、土地の砂漠化が広がっているんです。砂漠化は、農地で化学肥料と農薬を使い過ぎ、地中のバクテリアが死ぬことでも進みます。土に栄養素がなくなり、塩害が増え、土地が劣化して渇いてしまうんですね。その結果、さらに干ばつが進み、水不足はもちろん食糧不足が起こっている地域も多いのです」
また、水の不足と密接に関係しているのが、タンパク質の不足だそうです。貴重なタンパク源となる食用肉の中で、特に牛の畜産では、11kgの飼料用穀物を食べさせてやっと1kg分の食肉を確保できます。大豆などの飼料を作る水と牛が飲む水を確保することは、同量の栄養素を持つ穀物を作るのと比べて10倍の水が必要だといわれています。食用肉の確保は非生産的とされ、タンパク源の確保が困難になる未来も遠くありません。
食料資源の枯渇は、水とタンパク質に限ったことではありません。世界中の海で起こる水産物の減少、異常気象や土壌汚染による農作物の不作も叫ばれています。食糧自給率が38%(カロリーベース/平成29年度)に過ぎない日本が、今と同様に食糧を輸入し続けられるかは不明瞭です。そうした食の問題を解決するために、現在、各地で新たな取り組みが始まっています。
「まずはタンパク源の確保として、食用肉の代替食を開発する試みが世界各国の企業で進んでいます。そして先ごろ、アメリカのビヨンド・ミート社が開発した大豆100%完全植物性のビーフパティが、スーパーの精肉売り場に並び始めました。これはとても画期的な話で、今まで健康食品のコーナーにあったものを主要食品として求める人たちが増えてきた、何よりの証拠です」
それを裏付けるように、グローバル・トレンド予測のレポートである『The Future 100 2018』Food+Drinkの領域でも、注目される10のキーワードに「ビーガノミクス(完全菜食主義)」が挙げられました。地球環境に危機感を抱く人たちが、ビーガンへと転向する傾向も強くなっています。
これは食糧危機の問題が、海外では個人レベルで意識されている一つのよい兆候だと佐々木さんは語ります。一方、企業の意識向上についても分かりやすい好例を挙げていただきました。
「先日、ノルウェーのサーモン養殖の最先端を見てきました。最新の技術を使い、沖合い50kmの海域に巨大な生け簀を作って養殖を始めていました。ノルウェーのサーモン養殖会社には、サルマール社とマリーンハーベスト社というサーモン生産量で世界1〜2位を占める企業があります。その2社が同時に沖合養殖施設のプロトタイプを研究し、一部の工程を共同で開発していたのです。競合である2社が、お互いの技術をオープンソースにして開発していることに、私は感動しました。これは、水産資源の減少の危機感が企業間の連携を生んだ好例です。今後、さまざまな分野でこのような共同研究が進めば、食糧危機も回避できるかもしれないという可能性を感じました」
出典: 『The Future 100 2018』、Food + Drinkの領域で注目される10のキーワード
このように、今、世界中で食文化を次世代につなげようとする試みと意識の変革が始まっています。限られた食の資源を大切にするため、佐々木さんはこれからのフード業界で重要となるであろう3つのキーワードを挙げてくれました。
・代替食
前述しましたが、「代替食」はタンパク質確保のための最重要ワードです。フェイクミートや培養肉など、食肉の代替食に関するフードテクノロジーの研究も進化していますが、今ホットなワードと言えば「虫」。近年、フード業界で大きな投資が行なわれているのが、なんと昆虫ファームなんです。これは、昨今見かける昆虫食にとどまらず、食肉養殖業における餌としての昆虫も含まれます。アメリカの養鶏場では、これまでの餌である大豆を昆虫に変えるという実験が行なわれています。昆虫はエネルギー効率が高いといわれ、人間だけではなく、畜産にも代替食として検討が進んでいます。
・特殊保存技術の進化
保存には「冷蔵」「冷凍」「乾燥」などさまざまありますが、その中で飛躍的に進化している技術が、「冷凍保存」です。とれたての魚やおろしたての肉を一瞬で凍結させて、新鮮な状態を数ヶ月間も保つことができる最先端テクノロジーの研究が進んでいます。保存技術の進化により、フードロスの改善が期待できます。野菜が大量に収穫されたときにやむなく廃棄することがありますが、この技術が向上すれば大量廃棄の解決も夢ではありません。市場の状況に合わせて、解凍した食品を出荷する。最適な出荷をすることで、大量廃棄をなくす。食の明るい未来にとって、欠かせない技術となりそうです。
・サステナブルシーフード
「日本=漁業大国」というイメージがある方が多いと思いますが、現在の日本の水産業は疲弊しきっています。水産資源が大きく減少しており、現在の総漁獲高は、実は1980年代のピーク時の3分の1ほどしかありません。その理由は、海の環境汚染や温暖化などさまざま取り沙汰されますが、一番大きな理由は乱獲、つまり獲りすぎだとされています。そんな中、2018年秋に70年ぶりの漁業法改正が行われ、「水産資源管理」が初めて法律上明文化されました。漁獲量などを適正に管理することで資源が増え、今後サステナブル(持続可能)な魚がたくさんスーパーに並ぶことを期待したいところです。
今ある食文化を守るため、技術開発や進歩を待つだけでなく、個人で始められることもある、と佐々木さんは語ります。
「私たちが100歳になる時、テーブルの上には今とはまったく違う食べ物が並ぶことになるかもしれません。肉は大豆に置き換わり、魚はすべて養殖で生産される。普通に食べていたものが手に入れられなくなる。そんな未来を想像するだけで、とても悲しくなります。それを回避するために、まずは自分たちの足元を見直してみることが大切です。例えば、環境に負担をかけにくいオーガニック野菜や、エコ認証を受けたサステナブルな魚を可能な範囲で選ぶ、食材を使いきることを考え、フードロスを減らす、川や海の汚染を最小限に抑える洗剤に切り替えるなど、日常生活でできる小さな努力はたくさんあるはず。何よりこのような問題に関心を持ち、情報に触れ、意識して毎日を過ごすだけで行動は変わってくるんです。無関心が一番怖いですね」
これから人生100年時代へと歩みを進めていく中で、食の世界は私たちが想像もつかないくらい多様に変化していくかもしれません。その実情を知り、食に対するマインドを変える。一人ひとりが食と大切に向き合うことで、食の未来は明るく変化するはずです。
佐々木ひろこ(フードジャーナリスト)
大阪府生まれ。日本で国際関係論を、アメリカで調理学とジャーナリズムを、香港で文化人類学を学び、現在フードジャーナリスト、食の翻訳家として活動。サステナブルシーフードの普及を目指して活動するシェフグループ、一般社団法人Chefs for the Blueの理事も務めている。
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