体を動かす＝脳を動かす！

2023年12月28日 | 健康のこと -Health-

「使わないものは衰える」というのは人間の体のことわりであり、科学的にも明らかといえる事実です。動物である私たちは、動かなければ全身の筋肉がすぐに衰え、脳の認知機能も低下してしまいます。その逆もしかりで、体を良く動かすことは、筋肉を鍛えると同時に、脳のトレーニングにもなっているのです。
脳と運動の関係については、昨今、さまざまな研究でその詳細が明らかになってきました。

ウォーキングなどの有酸素運動を習慣にすることで、BDNF（脳由来神経栄養因子）の分泌が促され、脳の神経細胞や血管の再生を活発にして脳機能にポジティブな影響を与えるということは、以前から指摘されていました。
また、記憶を司る脳の部位「海馬」では、成人してからも新たな細胞「新生ニューロン」が成長することがありますが、それを促すのが、学習の他、運動であることも分かっています。

実際に、オランダの大学で行われた小学生を対象にした研究では、机の前に座って受ける通常授業だけよりも、定期的に体を動かす時間を組み合わせたほうが、テストのスコアが向上することが確認されました。
同じことは若年層だけでなく、中高年でも起こることが確認されています。

東北大学加齢医学研究所が行った研究では、1回30分間のサーキット運動を実施したところ、中高年女性たち（平均年齢66.9歳）の認知機能が向上することが分かりました。
サーキット運動とは、有酸素運動、筋肉トレーニングを30秒ごとに交互に行うというものです。それを合計30分間、繰り返してもらったところ、認知機能の向上だけでなく、気分の高まりも得られることが分かりました。つまり、1日30分間の運動をしたら、頭が良くなったうえ、前向きな気持ちまでも得られるようになったということです。
「運動をすると脳が若返る」というこの事実は、実は逆に「運動機能の衰えは、脳が衰えているサイン」ともいえます。

筑波大学の研究では、歩くときにふらつくなどのバランス障害は、MCI（軽度認知障害）患者よりもアルツハイマー型認知症患者に顕著に起こることが確認されました。さらに、MCI、アルツハイマー型認知症患者ともに、認知機能障害がより重いほど、バランス機能も悪くなることも分かりました。
最近、「よくつまずくようになった」「片足で立って靴下がはけない」「まっすぐ歩けず、フラフラしやすい」と感じたら、脳が衰えてきたサインかもしれません。

我々の研究では、脳トレを行うことで、不思議なことに運動能力まで向上することが確認されています。いくつになっても遅すぎるということはないので、「使わないものは衰える。使えば蘇る！」を合言葉に、毎日の運動習慣をスタートさせていきましょう。

川島隆太
株式会社NeU取締役 CTO、脳科学研究者

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