子どもから高齢者まで…効果絶大！「料理脳」

2023年12月28日 | 健康のこと -Health-

献立を考え、どこに買い物に行くかを決定する。お店で必要な材料をピックアップして購入し、それを洗って、切って、炒めたり煮たり…。
家事の中でも、料理は最も時間と労力がかかるタスクといえます。作業は何段階にも分かれていて、道具も調味料も多岐にわたり、それらをそれぞれ使いこなさなければなりません。料理が出来上がった後も、どのお皿にどう盛り付けるかなどを考えたり…きりがないほどタスクが続く、大変な作業です。
しかし、こうした創造力を発揮しながら多種多様な作業を行い、一定の時間で完成させる料理こそ、脳の持つ能力を最大限に引き出すことは、科学的にも明らかになっている事実です。しかも、発達段階にある子どもはもちろん、高齢者の脳までも活性化させる効果があることが分かっています。

まず、明らかになったのは、調理中は脳の広範囲が非常に活発になるということです。光トポグラフィを用いて調理中の脳活動の計測実験を行ったところ、メニューを考え、調理し、盛り付けるといったプロセスすべてにおいて、脳の活性化が確認されました。特に、大脳の一部である「前頭前野」が強く反応することも分かったのです。
前頭前野は、人間らしい高次な活動の一切を司っており、思考や判断、創造、記憶、感情抑制、集中などの働きを担う、重要な脳の部位です。
さらに面白いのは、一人ではなく親子で共に料理を行うとより脳が活性化するという点です。親だけ、子どもだけで料理をするよりも、一緒にその時間を楽しむことで、脳はより効果的に鍛えられることが分かりました。

高齢者にも料理の効果は同様です。
東北大学と大阪ガスが行った共同研究では、平均68.7歳の21名の方に毎週2時間の調理講習と自宅で毎日30分以上の調理作業を行ってもらったところ、3カ月後には前頭前野の機能が向上したことが確認されました。
1日30分、食事の支度をするだけで、相当効果的な脳トレになっていることがわかります。

昨今は、スイッチひとつで洗濯や掃除が終わる便利な家電が登場し、家事の負担は年々、軽減されています。そのなかで、料理だけは昔とさほど相変わらず、材料を切って、調理して、お皿に盛り付けて…といった手間暇がかかる家事として残っています。
たしかに、すっかり定着した宅配やテイクアウトを利用すれば、簡単に済ますことは可能です。電子レンジで温めるだけでおいしく食べられる加工食品もいくらでも手に入りますね。
それでも、メニューを考えることで創造力を膨らませたり、調理の効率的な段取りを考えて計画性を鍛えたり……脳をフル活動させる「めんどくさい」料理を楽しみながら、脳トレをする機会を少しでも作っていきましょう。おいしくて楽しい、毎日の脳トレとして、取り組んでみてください。

川島隆太
株式会社NeU取締役 CTO、脳科学研究者

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