記憶力は加齢で衰える…が、いくつになっても蘇る！

2023年12月28日 | 健康のこと -Health-

特定の名前や数字が思い出せなかったり、新しいことがなかなか覚えられなくなってきたり…。そんなときは「ああ、もう年なんだなあ…」と脳の衰えを実感するものです。
確かに、脳のピークは20歳といわれているため、記憶力や作業速度は加齢するにしたがって衰えてくるもの。しかし、それは「使っていないものは衰える」という、人間の体の法則からきているのかもしれません。
学生や社会人になりたての頃は、勉強や新たな仕事を覚えるために、必死に記憶をする必要があったでしょう。しかし、ベテランになってくると、さほど必死に覚えることもなくなってきます。すると、必然的に記憶をとどめておく脳の作業領域はどんどん狭くなり、記憶力は低下していきます。

この記憶力を支えているのは、大脳の一部である「前頭前野」が司っている「ワーキングメモリー」という働きです。ワーキングメモリーは、情報を一時的に脳内にキープし、その情報を利用するという一連のプロセスのことをいいます。
記憶力の良い人というのは、一時的にためておく記憶容量が非常に多く、一度にたくさんの情報を処理することができる人です。パソコンでいえば、メモリーが大容量の最新型、ということです。

パソコンと違って、人間のワーキングメモリーには2つの素晴らしい特性があります。
ひとつは「鍛えれば鍛えるだけその容量をどんどん増していく」ということです。それは、いくつになっても可能です。効果的な鍛え方は、文字や数字などの「記号」を一時的に記憶するトレーニングを繰り返し行うことです。例えば、nバック課題というものがあります。「1、6、8、3、7、4、2、9」とランダムに並んだ数字を覚え、n個前（nバック）の数字を答えます。「3」の1バックは「8」というように、1個前にある数字を答えます。2バック、3バックと難易度を上げて作動記憶力を鍛えることができます。
また、文章を音読するのもよいトレーニングです。音読は目で得た文字情報を一度記憶してそれをなぞるという、ワーキングメモリーが必要な作業です。のんびり読むよりも、できるだけ早く音読することで、よりトレーニングの負荷を高めることができます。

人間のワーキングメモリーが持つ素晴らしい特性の2つ目は、「記憶力と関係のない能力が開花する」ということです。ワーキングメモリーを鍛えることで、前頭前野の性能も高まり、認知機能全体にいい影響をもたらすことがわかってきています。この現象を「転移の効果」と言います。つまり、ワーキングメモリーのトレーニングをすることで、記憶力だけでなく、予測力や注意力、集中力、判断力、想像力、論理的思考など、あらゆる認知機能が全体的にパフォーマンスアップされるということです。
記憶力を高めることは、人間力全体を高めることになる。この科学的事実を励みに、ぜひ毎日、ワーキングメモリーのトレーニングを続けていきましょう。

川島隆太
株式会社NeU取締役 CTO、脳科学研究者

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