人生100年時代のドライバーがやるべき脳トレ

2023年12月28日 | 健康のこと -Health-

高齢者による自動車事故のニュースが昨今、クローズアップされています。実際に、車の運転は「認知・判断・操作」という行為の繰り返しで、認知・判断は前頭前野の働きであり、誰もが加齢するにしたがって低下していきます。
とはいえ、人生100年時代、生活のQOLを高く維持し続けるためには、自由に行動することができる車の運転は、できるだけ長くできるようにしておきたいものです。

我々の研究でも、高齢者の運転技術を上げるための試みをこれまで行ってきました。そのカギとなるが、脳トレです。
これまでにも、音読やかんたんな計算などで脳を鍛えることで、高齢者の認知機能が向上することは確認されてきました。認知機能を維持することができれば、当然ながら、安全に車の運転をし続けることが可能となります。
実は、運転中の脳は、さほど活動的ではなく、リラックスした状態であることがほとんどです。特に、日常的によく通る、勝手知ったる道を運転しているときにそれは顕著です。認知、判断、操作を司る脳の部位である「背外側前頭前野」の活動も、特に活発ではありません。
ところが、あまり知らない道や急カーブなどを運転するときには、脳は背外側前頭前野を活発に活動させることが確認されました。
つまり、必要な時にはしっかりと働くことができる前頭前野を維持することが重要、ということです。そして、それは先の通り、脳トレによって実現可能であることも分かっています。

我々が行った研究では、平均72.4歳の高齢者に1日20分間の脳トレアプリ（計算や処理速度を鍛えるゲームなど）を1日20分行ってもらいました。その前後に、自動車運転技能検査や認知機能検査、感情状態などのアンケート調査を分析したところ、脳トレを行うことで、自動車運転技術と処理速度や抑制能力といった認知能力が向上することが分かったのです。
さらに、ポジティブ気分（活力）も同時に高まることも判明しました。

情報を処理したり、とっさに判断したり、心身をコントロールしたりといった認知機能は、車の運転だけでなく、当然ながら日々を生きやすくするうえで欠かせない能力です。いくつになっても認知機能を維持し続けることは、生きやすさに直結するといえるでしょう。長く、安全に車の運転を楽しめるように、そして、毎日を快適にするためにも、1日10分間の脳トレを習慣にすることをおすすめします。いくつになっても、脳は鍛えることが可能です。

川島隆太
株式会社NeU取締役 CTO、脳科学研究者

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