脳が発火する学習方法

2023年12月28日 | 健康のこと -Health-

仕事や資格試験などで、記憶したり、深く理解するために勉強しなくてはいけないのに「どうも学生時代のように覚えられない…」「集中力が続かない！」という悩みを持つ人は少なくありません。脳のピークは20歳でそこからは緩やかに落ちていくため、若いころと比べると覚えが悪い、理解が遅いのも無理はないでしょう。
しかし、脳の仕組みや癖を利用することで、記憶力や理解力を高めることは可能です。
そのための大前提の準備として必要なのは、スマホやタブレットなどの端末の通知音を切り、目に見えないところへしまうことです。

脳が最も苦手なのは、マルチタスクです。何か作業をしているときに違う要素が割り込むと、とたんに情報処理がストップしてしまいます。特に意識を持って行かれるのが、メッセンジャーアプリの通知音です。東北大学が行った研究では、何かの作業に集中しているとき、後ろからメッセンジャーアプリの通知音が鳴ったとたん、注意力と作業効率が落ちることが分かりました。スマホではないタイマー音を鳴らしても、同じような現象は起こらなかったため、メッセンジャーアプリ特有の現象と考えていいでしょう。
学習中は常にスマホのスイッチはオフにして、視界の外にしておくこと。それが大前提と覚えておきましょう。

次に、学習に必要なタスクはなるべく小さく刻んだ「分散スタイル」にすること。学習したことをどれだけ記憶できているかという研究はいくつかありますが、そのどれもが、まとめて一気にやるよりも、時間の感覚を空けて分散させるほうが長く記憶を維持できると結論づけています。つまりは一夜漬けで6時間一気に勉強するよりも、2時間×3日間かけて同じ量を学習するほうが、より記憶に定着しやすいということです。さらに、数日後、数週間後に同じ形で復習として繰り返すと、より効果的です。

また、記憶するのにもコツがあります。作業や動作のために一時的に必要な情報を記憶、処理する能力を「ワーキングメモリ」と言いますが、この能力は、映像的なイメージで覚えるとより強固になるという特徴があります。たとえば「とんぼ、かぶとむし、ちょうちょ」を覚えるとき、言葉として覚えるよりも、それぞれのイメージを映像として脳内で描くほうが記憶に残りやすくなるのです。これは、記憶力だけでなく、視覚・空間的処理能力も働かせるために、より効果的に記憶できるようになるためです。物覚えを良くする技として、覚えたいものを映像に変換して記憶することを習慣にしてみてください。

勉強に対して脳にやる気を出してもらうもう一つのコツとして「音読」もおすすめです。目から文字情報を入力して脳内で処理する「黙読」と、声に出す「音読」を比べたとき、音読のほうが、脳の領域をより働かせることが分かっています。音読は大脳の70％を活性化させ、ものごとを理解しようと働く「前頭前野」や、言葉の意味を理解しようと働く「ウエルニッケ野」の神経細胞を一斉に発火させる効果があります。
学習前に音読をすれば、集中力、理解力を一気に高める効果が期待できます。覚えたいことはまず音読する。それを、学習前の準備運動として行うことをおすすめします。

川島隆太
株式会社NeU取締役 CTO、脳科学研究者

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