リアルな出会いは最高の脳活＆メンタルケア！

2023年12月28日 | 健康のこと -Health-

友だちとはメッセージアプリでやりとりし、仕事のやりとりはメールかオンラインでの会議で行う……昨今は、プライベートでも仕事でも、他者とのコミュニケーションはすべてインターネット上で行われることが増えてきました。逆に、直接集まって話をすることは「非効率的」と避けられるようになり、電話さえも「個人の時間への割り込み行為」と忌み嫌われるようになっています。

確かにオンラインは時間や労力を最小限にしてくれる、便利なテクノロジーです。私たちの生活を格段にラクにしてくれました。ところが、この「楽をする」というのが、実は脳にとっては大きなマイナスとなってしまいます。
というのも、社会的な動物である人間は他者と相対して会話をすることで、脳を活発に働かせているからです。言葉を聞いてその内容を理解したり、身振り手振り、声、表情の様子から感情や欲求を読み取ったり…そうした一連の情報処理を行うために、脳の広範囲が活発に働いているのです。

オンライン会議やSNSでのやりとりでは、この働きはほぼ行われません。それどころか、脳がほとんど使われない状態になることが、研究で明らかになっています。脳を使う機会を大きく損なうために、脳機能全体を低下させることにつながってしまうのです。
実際に、人と会う機会を失い社会的に孤立してしまうことで、認知機能が低下し、認知症発症リスクの原因となってしまうことは、多くの研究で報告されています。人との直接的な接触機会が少ないほど、高次な働きを司る脳の前頭前野や灰白質の容積が小さくなる傾向があることも分かっています。
脳が抑制されるほか、オンライン上のコミュニケーションにはもう一つ、大きな問題があります。それは、リアルの対話で起こる「感情の共有」という脳活動が起こらない、ということです。

我々が学生の対面とオンラインのコミュニケーションの違いを調査したところ、互いの顔を見ながら対面で会話をしているときには脳反応の周波数の同期が起こりましたが、オンラインではまったく起こらなかったのです。つまり、「オンライン上では情報の交換はできるが感情の共有はできない」ということが分かったのです。

脳が働くことを抑制し、感情を共有して互いを思いやる機会が極端に少なくなれば、脳の機能低下だけでなく、メンタル面でもネガティブな影響が心配されます。リモートワークが定着してきた昨今ですが、できるだけ人と直接会う機会をつくり、脳を活発に働かせると同時に、感情を共有する時間を意識的に作ることも心がけて、脳とメンタル面の若さをキープしていきましょう。

川島隆太
株式会社NeU取締役 CTO、脳科学研究者

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