睡眠不足で脳が縮む!?頭が良くなる睡眠法は？

2023年12月28日 | 健康のこと -Health-

いつもよりも睡眠時間が少なくなってしまった朝はけだるくて起き上がるのがつらく、その日は一日中頭がボーっとしてしまいます。「睡眠不足が脳の働きを低下させる」ということは、こうした実経験から誰もがよく理解していることでしょう。

睡眠不足がなぜ脳や体のパフォーマンスを下げてしまうのかというと、体中がエネルギー不足になるためです。私たちの体は60兆個の細胞で構成されており、その細胞の一つ一つの中には無数の「ミトコンドリア」という器官が存在しています。ミトコンドリアは細胞を働かせるために、糖質や脂質を原料にエネルギーを生産しています。いわば、発電所の役割を担っているのです。ところが、睡眠が十分に足りていないと、このミトコンドリアがうまく働かなくなり、エネルギーの生産が滞ってしまうのです。そのため、私たちの脳も体も一気に動きが悪くなってしまう…というわけです。

そして、この睡眠不足の怖いところは、脳のつくりそのものを変えてしまうことにもあります。一時的な睡眠不足は先の通り、働きを低下させるだけですが、この睡眠不足が常態化すると、脳の一部が徐々に萎縮してしまうことが分かっています。そのために、認知機能が著しく損なわれることになるのです。

また、脳は眠っている間に「アミロイドβ」と呼ばれる老廃物を排出し、疲れを回復するためのメンテナンスを行っていることも分かっています。そのため、睡眠不足になるとこの老廃物の排出が不十分になるため、脳内はゴミだらけのままとなってしまうのです。アミロイドβはアルツハイマー型認知症の原因になるとも言われていますから、睡眠不足は直接的に、認知症発症のリスクを高めることになるといえるでしょう。

では、脳のためにはたくさん睡眠をとればよいのかというと、そうではないようです。昨今の研究では、過剰な睡眠もまた、睡眠不足と同じように認知能力を低下させることが分かっています。1日7時間程度の睡眠が最適であり、それよりも多かったり少なかったりすることで、処理速度や視覚的注意、記憶などの認知能力だけでなく、精神状態にもネガティブな影響が現れるといえます。
つまり、「今週は寝不足が続いたから、週末は寝だめをしよう！」というのは、睡眠不足+睡眠過剰のダブルパンチで脳に悪い…と予想できます。
小さなころから家庭や学校で耳にタコができるほどいわれ続けていた「規則正しい生活」というのが、脳と体のパフォーマンス維持のためには理にかなっているということ。睡眠は7時間を目安に、決まった時間に寝起きすることが、脳の一日の疲労をリフレッシュして、生涯を通じて健全に保つことにつながります。

川島隆太
株式会社NeU取締役 CTO、脳科学研究者

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