宇宙空間は絶好の研究場所！？加齢研究の最前線

多くの方々が子どもの頃、「いつか宇宙で暮らすことになったら」「宇宙飛行士になれたら」と想像したはず。しかし、実際には、宇宙で暮らしたあとに地球に帰還すると、筋肉や骨に大きなダメージを受け、回復するまでに相当な時間を要するそうです。その状態はいわば「加齢を倍速で体験するようなもの」なのだとか。そんな宇宙空間の特性を生かし、私たちの健康を増進するためのヒントを得ようという取り組みがいま、始まっています。

本稿では、そんな研究を進める、東北大学東北メディカル・メガバンク機構の機構長・教授として活躍する山本雅之氏と松田貴夫（アクサ・ホールディングス・ジャパン取締役執行役員 兼 CMO）が対談した様子をお伝えします。

加齢研究に宇宙空間が最適な理由

私たちは日々、酸素や毒物によるストレスを受けています。それでも普通に活動できるのは、そうしたストレスから体を守る仕組みが存在するからです。山本先生は、その働きを担っている因子を研究し、「NRF2という防御因子が働いていること」を発見したそうです。

では、「防御因子は本当に私たちの体を守ってくれているのか？」。それを確認するために、山本先生にひらめいたのが「宇宙空間での実験」です。

「なぜ、地上から遠く離れた宇宙空間に研究の場を広げたのか？」と、その発想に驚く松田。
その理由を山本先生は、「宇宙に行ったヒトは、無重力や宇宙の放射線などさまざまなストレスを受けます。そのため、宇宙飛行士さんたちは帰還するともうフラフラになります。歩くこともできないほど筋肉の量が減り、骨の量にまで影響が及ぶことがわかっています。それでも宇宙空間で活動できるのは、きっと地上で私たちをストレスから守ってくれている『防御因子』が宇宙でも働いているからだろうと考え、それを確かめるために宇宙にマウスたちを送り出しました」と、教えてくださいました。

山本先生の“任務”を受け、宇宙ステーションに滞在した「防御因子をもたない6匹」と「普通の6匹」のマウスたち。1ヶ月の宇宙生活を経て元気に帰還したマウスたちは、「やはり宇宙空間でも防御因子は働き、ストレスから体を守ってくれていること」を教えてくれました。

さらに、「地上だと長い時間をかけて年を重ね、加齢変化をするものです。しかし、宇宙ではすごいスピードで同じような加齢変化が起きるので、宇宙で研究することは、地上の加齢や老化をビデオの早回しで見るようなものだと言えます。宇宙は私たちの研究にとって、非常に優れた環境であるということがわかりました」と、山本先生。

宇宙で加齢や老化の研究が進み、これを防ぐことができれば、地上に暮らす私たちにもその技術を応用するなどの未来が広がりそうです。

遺伝子とライフスタイルで健康は成立するからこそ

上述を受け、「ストレスの受け方やその大きさはひとそれぞれ。今回、2つのグループのマウスたちが教えてくれた研究結果は、ヒトの一人ひとりの健康維持や増進のあり方を変える必要性、個別化させることの重要性を考えるきっかけにもなりそうですね」と水を向けた松田。

これに対し山本先生は、「私も、たとえば30代の男性はこんな健康リスクがある、というように全ての方々を同じように考えて、健康維持や増進の方法を伝えたり、保険の恩恵を考えたりすることはあまり実情にそぐわないように思っています」とし、次のように話してくださいました。

「あるひとは健康を守ることに日々努力していて、別のひとはそれほど健康意識が高くない、とします。その両者を同一には取り扱うことはできませんよね。また、私たちの健康は、遺伝子によって決まる『体質』とライフスタイルによる『環境』の要因の両方が相まって左右されるものです。なので、健康に気遣っているひとには何かインセンティブを贈ったり、別のひとにはちょっと健康に意識が向くように背中を押すようなサポートをしたりと、個人に即した働きかけが必要だと思っています」。

その上で、「ちょっと遺伝的なリスクが高いひとでも、ライフスタイルを努力すれば遺伝的なリスクを克服できる可能性があり、一方、遺伝的リスクが低くてもライフスタイルが悪ければダメだよ、と。そういうことを伝えて、社会は個人に即して健康を守っていき、みんなが納得する社会になればいいな、と思っています」としました。

健康を維持増進する方法の将来像とは？

では、山本先生が示した、「個人に即して健康を守っていく社会」を実現するにはどんな努力が必要なのでしょうか？山本先生と松田は対談の最後に、「生命保険会社ができること」を語り合いました。

その中で、両者は、「生命保険会社は、加入するお客さまと、50年や60年にもおよぶほど長くパートナーとしてお支えする存在。だとするなら、保険会社は、『お客さまお一人おひとりの健康維持に役立つ情報をお伝えしたり、遺伝子解析などを通してリスクを予測してアドバイスを送ったり、健康コンシェルジュとしての働きかけをする』という新たな取り組みを進めることも一案だ」というアイディアを見出しました。

もしそんな将来が実現できれば、たとえばがんのリスクが高い方に早めにリスクを知ってもらい、しかるべき準備を進めたり、いざという場合には早期発見早期治療に繋げたりすることで、少しでも早く日常に戻れるようにするなど、QOL（クオリティ・オブ・ライフ）の向上に繋げることができるでしょう。

もちろん、がんに限らず、さまざまなお客さまのリスクに向き合いより良い未来を築くサポートができるはず。そうなれば、アクサも「保険金や給付金をお支払いするペーヤーという存在から、人生100年時代をともに歩むパートナー」としての役割をより果たすことができると考えます。

こんなふうに想像を広げると、宇宙空間での加齢研究とそのフィードバック、そして、その結果を活用することは、私たちにとって大きな意義と価値があると言えます。アクサはこれからも山本先生が進める研究を応援するとともに、高齢化がもたらす社会的課題の解決に向けてアクサならではの価値を社会にお届けできるよう、協働していきます。

【プロフィール】

山本雅之
東北大学東北メディカル・メガバンク機構長
東北大学医学系研究科 教授（医化学分野）
1983年東北大学大学院医学系研究科博士課程修了。米国ノースウエスタン大学博士研究員、東北大学医学部講師、筑波大学先端学際領域研究（TARA）センター教授、東北大学医学系研究科教授。2008年より同研究科研究科長、医学部長、東北大学副学長。2012年より、現職。環境ストレス応答の基礎研究と複合バイオバンク事業を実施中。前者の成果により、日本学士院賞、紫綬褒章、東レ科学技術賞、上原賞、高峰記念第一三共賞、日産科学賞、つくば賞、井上賞、北米毒性学会（SOT）基礎科学賞、日本腎臓財団賞などを受賞。

松田 貴夫
取締役 専務執行役員 兼 チーフマーケティングオフィサー
アジア地域担当カスタマープロポジション部門長
1991年三井生命保険相互会社(現大樹生命保険株式会社)入社。1999年アメリカンファミリー生命保険会社に入社後、アフラックダイレクトドットコム株式会社に出向し、取締役 チーフマーケティングオフィサーに就任。その後、アメリカンファミリー生命保険会社においてマーケティング戦略企画部長、商品開発部長、商品本部長などの要職を歴任。2008年9月、アクサ生命保険株式会社に入社。執行役員チーフマーケティングオフィサー、常務執行役員 チーフマーケティングオフィサーを経て、2010年6月、取締役 専務執行役 兼 チーフマーケティングオフィサーに就任。2019年4月、監査役設置会社移行に伴い取締役　専務執行役員　兼　チーフマーケティングオフィサーに、2020年3月、アジア地域担当カスタマープロポジション部門長に就任し現在に至る。

アクサジャパンホールディング株式会社　取締役 執行役員 兼　CMO兼務　
名古屋大学工学部 卒業
日本アクチュアリー会正会員

ガン治療保険（無解約払いもどし金型） マイ・セラピー専用サービス

ガン治療保険（無解約払いもどし金型） マイ・セラピー専用サービス

アクサ生命は、まず「がんに罹患しない」ためのサポートを、もしもがんに罹患したとしても「早期発見と最適な治療方法の選択」「治療と生活の両立」のサポートをいたします。

アクサ生命のライフマネジメント®

アクサ生命のライフマネジメント®

あなたの「夢」を叶え、人生100年時代を豊かにするためのプランを一緒に考えませんか。