2019年2月27日 | 会社経営のこと -Business-
「経営者が押さえておくべきIT化のポイントとは?」という記事では、中小企業におけるIT化の重要性やサポート制度、先行事例について紹介しました。
「あなたが100歳になるまでに日本で起こること」でも指摘しているように、2053年には日本の人口は1億人を下回る見込みで、生産年齢人口(15~64歳)も2060年に約4,800万人と、2015年の約6割の水準まで減少すると推計されています。※
※総務省「国勢調査」、国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」(平成29年推計)
少ない人手でも業績を伸ばすために、まさに企業の生産性向上のカギとなるのがIT化だと言えるでしょう。そこで今回は、IT投資の効果を最大限に生かし、より確実に成果を出すための具体的な導入・進め方を説明していきます。
まずは自社の状況を分析し、目的を明確にしたうえで、どの業務分野、範囲に注力するのがベストか検討しましょう。どうしても「あれも、これもやりたい!」となりがちですが、そうすると導入の際の初期コストが膨らんだり準備に時間がかかったりして、結局うまく活用できなくなってしまうといった懸念も出てきてしまいます。
IT化の基本は「スモールスタート」。本当に集中すべき範囲を見きわめることがとても重要です。
IT化によって効率化が叶うとされる対象は財務、人事、在庫管理、営業支援など、さまざまに挙げられます。中でも財務・人事の分野では、「クラウド会計」や「クラウド勤怠管理」などいくつものサービスが誕生しており、選択肢を広く持つことができそうです。これは、事業内容が異なっていたとしても、やるべきことが標準化されているため、システムを提供する側もサービスを作りやすい、という特徴があるからだと推測できます。
では、自社の状況および費用対効果を考慮して経営資源をどの分野に集中投下するか ― まさに経営判断のしどころだと言えるでしょう。
集中すべき分野を定めたら、さっそくIT化のために動き出そう!と思われるかもしれませんが、IT化にもいくつかの方法があります。事前に把握しておけば、パートナーとなるIT企業と話す上で役立つはず。ここで概要をお伝えしておきたいと思います。
・クラウド型サービスの導入
近頃よく聞く「クラウド・サービスの利用」がまさにこれを意味します。
ITサービスを利用する際に必要なインフラやソフトウェアがインターネット上の雲(クラウド)の中に用意されており、利用者はサービス提供者と契約することで、必要な時に必要な分だけサービスとして利用することができます。
導入を決めてから利用できるようになるまでの時間が短く、コストも割安になりやすい、といった魅力があります。
クラウド・サービスのイメージ
・自社用システム開発・導入型
サーバー等のハードウェアを自前で購入し、自社が利用するためのシステムをイチからオーダーメイドに作り込んで利用する方法が「自社用システム開発・導入型」です。ITのテクノロジーが普及し始めたころはこのやり方が主流だったこともありました。
・インストール型・パッケージソフト型
コンパクト・ディスクやwebサイトから得たソフトウェアをパソコンにインストールしてサービスを利用する形式が、「インストール型・パッケージソフト型」と言われるものです。クラウドサービスが登場するまで主流だったので、ご記憶の方も少なくないでしょう。
あなたの会社にとって最適な方法はどれか、しっかりとメリットとデメリットを想定しておきましょう。
ただ、実際のところ、平成29年版 情報通信白書によると大企業でもクラウド型サービスの利用率が高まっているようです。
2018年版 中小企業白書では、「これからのIT導入においてはクラウド・サービスの活用が有効であると考えられる」とし、その利点として下記の4点を挙げています。
1. サーバー等の設備を自ら保有することが不要。技術者の常駐も不要。
⇒サービス内容や契約形態にもよるが、多くの場合、ユーザー側が何かを用意する必要がない。また、サービスをメンテナンスする費用も抑えることができる。
2. 初期導入コストが低い
⇒月額数千円で利用できるサービスもあり。「試しに使ってみよう」と気軽に検討しやすい。もし失敗しても減価償却資産ではないことなどから撤退の判断がしやすく、別のサービスに切り替えることも難しくない。
3. データの連携方法によっては、経営判断に役立つデータ集計が可能に
⇒登録されたさまざまなデータにすばやくアクセスできるので、経営陣は「経営を考える時間」の余裕が持てるとともに、タイムリーな経営判断につなげることも期待できる。
4. 企業間連携のツールとしては、クラウド・サービスの方がやりやすい場合がある
⇒多くのクラウド・サービスではシステムやサービス間の連携をスムーズにする仕組み(API)が利用可能。これを活用すれば、たとえば、勤怠管理と工数管理の情報を別々のシステムに入力していても、ひとつの情報のかたまりとして扱える可能性が広がる。
上記以外にも、すでに多くの企業で利用実績のあるクラウド・サービスであれば致命的な問題(バグ)が潜んでいるおそれが低く、安定した稼働が期待できる、という利点もあります。
さらに、データ容量の上限や利用アカウント数などをすぐに増減させることができる、という点でも優れています。ただし、そうした追加の要望には追加料金が必要になる場合がありますので、注意してください。
では、ここでIT投資としてクラウド・サービスの導入と利用を行った事例を、2018年版 中小企業白書から見ていきましょう。
ひとつ目の事例は、東京都のA社(従業員70名、資本金300万円)。
同社は、パン製造小売事業として、生産工場を持ち、自家製焼き立てのパン屋を2店舗展開。地元の方々にも親しまれているそうです。
日々忙しく働く社員の中にITに精通した人はいないものの、地元のIT販売会社の営業担当とは日頃から密にコミュニケーションし、IT補助金活用の提案もこの担当者から受けたとのことです。これがきっかけになって、A社は次のようなクラウド・サービスを導入しました。
<導入したクラウド・サービス>
・クラウド給与・就業管理
<導入後の効果>
導入前は、各店舗が勤怠情報を書類に記入し、その書類を本社で給与ソフトに手入力していたそうです。しかし、クラウド・サービスを導入し、給与と就業管理を連携させた結果、店舗ごとの勤怠データの集計から給与ソフトへの反映まで自動化され、給与計算業務の時間が大幅に短縮されたとのこと。
具体的には、毎月の給与・就業管理事務が7人日から3人日に削減。人件費削減に加え、これまで対応していた事務長が、売上や経営に直結する業務により多くの時間を割り当てられるようにもなったのだとか。
IT導入補助金活用を活用していることもあり、クラウド給与・就業管理ソフトと導入サポートサービスで合計約180万円。その効果は絶大だと言えるでしょう。
同社はさらに、クラウド給与・就業管理とインターネットバンキング(給与振込等)との連携も検討していると記されています。連携が実現すれば、さらに労働生産性の向上が期待できそうです。
A社は、IT専任の社員がいなくても、またその採用が難しくても、色々な関係者からサポートを受ければ中小企業のIT化も難しくない、ということを教えてくれる成功事例です。
同社の社長は事例紹介の記事に、「ITでもお互いにWinWinな関係が長続きのコツ」とのコメントを寄せています。これは、IT化を進めるポイントのひとつであると同時に、長期的にビジネスを成功に導く重要性を言い表していると考えられるでしょう。この点も参考になりそうですね。
法務や会計等と同様、ITも専門性の高い分野といえます。専門家の協力を得ながら進めていければ成功の確率を大いに高めることができるはず。地元のIT企業や行政、支援機関に相談するといったサポートを積極的に活用してみてください。
※2018年版 中小企業白書 4章 IT利活用による労働生産性の向上(事例2-4-3)を加工して掲載
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2つ目の事例は、東京都台東区のB社(従業員19名、資本金2,000万円)。ゴム製品を取り扱う卸売事業者です。
同社の強みのひとつは、顧客との長期的な関係をもとにした営業活動。ですが、営業社員は直行直帰も多く、営業報告も週1回程度と、リアルタイムで顧客との関係を把握できていなかったそうです。情報共有の仕組みが整っていないため、顧客から問い合わせがきても内勤社員がスピーディーに対応できない、という課題があったと記されています。
<導入したクラウド・サービス>
・営業支援システム
<導入の背景、導入後の効果>
同社では、人手不足への対応を背景に3年前から在宅勤務を導入しており、在宅勤務の社員との連携を図る上でもクラウドが有効と感じたそうです。
そうした中、B社の社長は、IT導入補助金の活用について検討。数社ベンダーを比較検討した結果、地元のIT販売会社の提案が導入したいシステムに近いと判断し、これを契機に営業支援のクラウド・システムの導入を決定したとあります。
初期費用は百数十万円程度であり、そのうち半額がIT導入補助金による補助対象。ランニングコストも月数万円程度とのことです。
また、B社ではものづくり補助金を活用し、倉庫内で製品の梱包を行うロボットの開発も進めるなど、事業への投資を活発化させているようです。社長は「経営資源に乏しい中小企業は、補助金もうまく活用しながら自社の経営資源を大切に育てていく必要がある」と、事例紹介記事にコメントを寄せていますが、この考え方は非常に参考になりますね。
<将来の展望>
同社では、顧客からの要望に迅速に対応できるよう、将来的には、受注~梱包~発送まで全て自動化するような仕組みを目指しているそうです。「今後、人手不足が進む中で、可能な限り自動化を進め、自社の社員には顧客対応等、人と人とが関わる仕事に専念してもらいたい」とは社長の言葉です。
あくまでもITは事業を支えるためのもの。今後大きく情報化が進んだとしても、本業の核となる部分を磨くことが重要である点は変わりませんね。
※2018年版 中小企業白書 4章 IT利活用による労働生産性の向上(事例2-4-4)を加工して掲載
2018年版 中小企業白書では、IT導入の効果が得られた企業に対して、その成功の理由を尋ねた結果がまとめられています。
それによると、「IT導入の目的・目標が明確だった」、「専任部署、あるいは専任の担当者を設置した」、「経営層が陣頭指揮をとった」が約3割で上位を占め、次いで、「業務プロセスの見直しを合わせて行なった」、「IT導入を段階的に行なった」、「導入前に、利用予定の従業員の意見を聞いた」が約2割で続きます。
ITの話だからと言って、テクノロジーのことばかり気にするのは禁物です。重要なのは、まず経営者自身が目的や理想像をはっきりと示すこと。そして、パートナーとなるIT業者に任せきりすることなく、しっかりとオーナーシップを発揮して進めることです。そうすることで、IT化成功の可能性を大いに高まることでしょう。
さあ、一歩踏み出してみましょう!
監修:
アクサ生命 デジタル&カスタマーエクスペリエンス部 デジタルマーケティング課
オンライン・プレゼンス・マネージャー 保栖 文博
(中小企業診断士、第一種・第二種情報処理技術者、AFP)
企業のライフステージに応じた様々な課題にお応えし、「100年企業」を目指すためのサポートをいたします。アクサ生命の『社長さん白書』にご興味をお持ちの方は、公式サイトよりお問い合わせください。
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