2020年12月23日 | 会社経営のこと -Business-
近年注目されるようになった「働き方改革」や「デジタルトランスフォーメーション(DX)」への対応だけでなく、経営者が勇退時期に近付くにつれて高まる「就業不能への不安」や「介護・認知症の問題」、「事業承継に関連する事柄」など、中小企業や小規模事業者の経営者を取り巻く課題は年々増してきていました。
そんな中で突如として起こった新型コロナウイルス感染症に端を発する諸問題もまた、会社経営をこれまで以上に難しいものにしています。
アクサ生命が2020年7月から9月にかけて全国47都道府県の中小企業経営者の皆さまに実施したアンケートをもとにまとめた「社長さん白書 2020」によると、新型コロナをきっかけに「事業に大きな影響が出ている(25.2%)」「事業の一部に影響が出ている(34.6%)」と回答した経営者は合計して半数を超えていることがわかっており、足元の事業環境の変化を深刻に受け止めざるをえない状況であることが伝わってきます。
※「社長さん白書 2020」より抜粋
では、コロナ禍を経て社会が変革し始める今日、経営者は何ができ、どう変化に対応していけばいいのでしょうか?先述の「社長さん白書」の他、従業員に向けたアンケートの内容も踏まえて、考えてみましょう。
会社を支え、実際に事業を推進してくれる担い手は何といっても従業員の方々です。そこで、まずは彼らがいま何を考えているのかについて、目を向けてみましょう。
アクサ生命が従業員数300名以下の中小企業で働く会社員(経営層を除く)を対象に実施したアンケート「従業員を対象とした日常の悩みやストレスに関する実態調査* (2020年7月実施)」の結果によると、74.2%が「仕事・職場についての悩みやストレスを感じている」と回答していることがわかりました。
悩みやストレスの原因はさまざまですが、「給与や福利厚生等の待遇(52.2%)」「仕事内容(49.5%)」「職場内での人間関係(47.9%)」と続いています。調査が2020年7月に行なわれたこともあり、自由回答には「(新型)コロナウイルスによる仕事の減少」や「(新型)コロナウイルス蔓延での業績不振による所得の低下、及び今後の雇用維持」といった声も上がっていました。
※「従業員を対象とした日常の悩みやストレスに関する実態調査」より抜粋
日常的に強い不安感を覚えたり、先行きが見えない不確実な状態が続いたりすることは決していい状態であるはずがありません。特に、人生を豊かに充実させる土台である「こころの健康」「からだの健康」「お金の健康」のうち、「お金の健康」について、それを得る場でもある職場で不安を感じているのだとすれば、その気持ちはさらに高まってしまうとも推察されます。
そのような不安定な状態で仕事に取り組むことは従業員一人ひとりにとって重苦しい状況といえ、原因を取り除かない限り、企業としても一人ひとりの持ち味や意欲を発揮してもらえるように促すのが難しいと考えるのが当然です。
●関連記事
「コロナうつ」は職場全体で乗り越える~健康経営でワーク・エンゲイジメントの向上を目指そう~
一方、実際のところ、経営者自身も従業員と同様に「お金の健康」への悩みやストレスを抱えていることが「社長さん白書 2020」から明らかになりました。
例えば、経営者が抱える「勇退後の不安」について見たところ、最も懸念しているのは「生活資金の準備不足(27.5%)」であり、「公的年金の給付額減少」や「相続対策」、「病気・ケガへの経済的準備不足」「介護への経済的準備不足」「認知症への経済的準備不足」「インフレによる貯蓄の目減り」と続いています。つまり、「不安はない」「勇退しない (したくない)」「その他」以外の66.2%が何らかの経済的な不安を覚えている、というわけです。
※「社長さん白書2020」より抜粋
先ほども挙げた通り、人生を豊かに充実させる基礎は、「こころの健康」「からだの健康」「お金の健康」の3要素がバランスよく保たれている状態であるとアクサ生命は考えています。ならば、従業員の一人ひとりや経営者の共通の課題である「お金の健康」への不安を解消することは、コロナ禍において最も手厚く対処しなければならないことだと言えるでしょう。
この点についてはコロナ禍当初から方々で指摘されており、国からも経営に不可欠な資金の支援がさまざまな形でなされました。しかし、それだけで十分と言えるほど今回の困難は生易しいものではないことは周知の通りです。
ただ、そうした中でも決して少なくない中小企業や小規模事業者の皆さまが「もしもの経営リスクへの備え」を続けてきたことも、「社長さん白書 2020」の調査を通じて明らかになっています。その一例として挙げられるのが「役員退職慰労金の準備」です。
役員退職慰労金とは、取締役などの役員が退職する際、株主総会または定款によって支給されるお金のことで、「経営者にとっての退職金」と表現されることもあります。ただし、従業員の退職金のように規定にのっとって支払われるものとは違い、正式な手続きを踏まなければなりません。また、経営状況や事業の成り行きによって、支払われるかどうかや、いくら支払われるかが決められるという特徴もあります。
多くの場合、「経営者の勇退後の備え」として生命保険を活用するなどして準備を進めるものですが、それだけではなく「経営リスク」への備えという側面もあります。
例えば、売り上げ減少や信用低下による資金繰りの悪化や得意先のアクシデントや市場環境の急激な悪化が起こってしまった場合、事業継続や当面の運転資金の確保は企業を存続させ、従業員を守るためにも不可欠です。そうした場面で、それまで役員退職慰労金として積み立ててきた保険を解約して手元資金を厚くする、といった対処ができるのが生命保険を活用した役員退職慰労金の利点のひとつというわけです。
●参考記事
東日本大震災を乗りこえた中小企業から学ぶ、「保険」による事業継続
※「社長さん白書 2020」より抜粋
経営者の不安な気持ち、特に資金繰りの悪化は、たとえ口に出さなかったとしても従業員にも伝わっていくもの。こと、このコロナ禍では、中小企業だけでなく大企業ですら未曾有の経営環境の悪化に窮していることが連日報道されるようになり、不安が増しやすい状況だと考えられます。そして、このことはコロナ禍に限ったことではありません。
だからこそ、困難な状況を打開する最後の一手となる備えをしておくことが経営者には常に求められるといえます。「もしも経営リスクが高まったら?」をあらかじめ想定し、対処できるように備えておくことは、ある意味で究極のBCP(事業継続計画)対応になる、とも言えるでしょう。
先述の通り、経営リスクが高まった時の“対症療法”ができたとしても、持続可能な経営を続けていくには前述のような方法だけでは残念ながら十分とはいえません。次に着手したいのは、言うまでもなく、会社の「次の展開」を考えることです。
これまで、経営者たるものは企業を引っ張っていくべきだ、との考え方が強かったものですが、コロナ禍のように社会の「当たり前」が根底から変わるような時代には、ひとりの頭でだけ考えるのでは限界があると想像できるでしょう。むしろ、会社の成長を担う従業員の皆さんとしっかりと手を取り合って、「次」を構想する方が理にかなっていると考えられそうです。
アクサ生命では、そうした従業員と経営者がお互いに手を取り合って持続可能なあゆみを進めていくための取り組みが「健康経営**」であり、それによって醸成されるワーク・エンゲイジメントがあゆみの原動力になるのだと考えています。
●ワーク・エンゲイジメントとは?
仕事に誇り(やりがい)を感じていること(熱意)、仕事に熱心に取り組んでいる状態(没頭)、仕事から活力を得ていきいきしている状態(活力)の3つの高い状態とされています。(ウイルマー・シャウフェリ教授、ユトレヒト大学)
アクサ生命が、自治体や商工会議所、協会けんぽ支部と連携・協働して推進している「健康経営」とは、働く一人ひとりが幸せでイキイキとし、企業も永続的に発展することを目指す取り組みです。
具体的には、協会けんぽや企業が実施している健康診断やワークライフバランス、感染症対策などの健康保持・増進の取り組みをより深められるよう「食事・栄養管理支援」「健康機会増進アプリ」「睡眠チェック」など6つの外的アプローチと、企業が行なう組織・従業員への働きかけを自分ごと化できるよう「健康宣言づくりサポート」「生命保険を活用した保障制度」「健康経営セミナー」など5つの内的アプローチを行なっています。
特に、内的アプローチの要として、従業員のみなさんそれぞれの夢や叶えたいこと、歩みたい人生の姿を思い描きながら、「それを実現するために必要な『こころの健康、からだの健康、お金の健康』をどのように保ち増進していくかを考え、自分を中心に、家族や会社など自分が所属するコミュニティーとの関わり方を想像する」というライフマネジメント®の提供は、「健康経営」を自分ごと化していく上で非常に重要なサポートと位置付けています。
このような働きかけを通じて、着実に、「職場は自分たちを守り、自分たちの将来ことまで慮ってくれる存在だ。この先を一緒に歩んでいく存在だ」と理解してもらうことがワーク・エンゲイジメントを向上させ、「健康経営」を職場の文化や“当たり前”にしていくものと考えます。
●参考記事
効果的な「健康経営」のために「健康経営」は、外的/内的の両面からのアプローチが必要です。
では、肝心の「健康経営」について、従業員はどのように捉えているのでしょうか?
「従業員を対象とした日常の悩みやストレスに関する実態調査」によると、87.1%が「(健康経営という言葉を)聞いたことがない」と回答しており、一部では「財務状況が健全であること」「黒字経営、無借金経営を意味する言葉だ」といったちょっとした勘違いも見受けられました。
※「従業員を対象とした日常の悩みやストレスに関する実態調査」より抜粋
一方、企業が行なっている健康についての取り組みは、「企業が実施する健康診断(62.8%)」が最も多い回答になっており、次いで「感染症対策、受動喫煙対策等(23.5%)」と、法令遵守や必要に迫られた事柄に対するアクションを着実に行なっているとわかる内容が続きました。
※「従業員を対象とした日常の悩みやストレスに関する実態調査」より抜粋
しかし、従業員が「健康経営」と聞いて連想する事柄はそうしたことではなく、「安心して働ける環境づくり(54.6%)」「社員のワークライフバランスの維持(52.1%)」「企業による社員の健康維持・増進(41.7%)」であることも今回の調査で明らかになっています。
これは、企業が健康診断のようなシンボリックな取り組みから、もう一歩踏み込んで「健康経営」を実践しようとしたら、従業員も興味関心を持つ可能性がある取り組みはどのようなものなのかを感じさせる結果だと言えるでしょう。「健康経営」の取り組みが経営者・従業員をより結びつけるきっかけになると捉えられそうです。
とはいえ、「会社が『従業員の健康のために』と旗を振っても、『業務が忙しいから』とソッポを向かれてしまうんじゃないか?」、「『健康経営』を始めてもビジネスに資することはないのでは?」と感じている経営者もいらっしゃるかもしれません。特に昨今の状況では、「直接売り上げに結びつかないことに注力するのは難しい」と考える向きもあるでしょう。
しかし、例えば、「健康経営」という言葉も知らずに取り組みを始めた株式会社西田製作所は、外的/内的アプローチによって従業員一人ひとりに小さな変化が起こり始め、あることがきっかけで従業員同士のコミュニケーションが円滑になった結果、「フット式アルコールスタンド」(足で踏むタイプの消毒液装置)という新商品を生み出すまでになりました。
●参考記事
新型コロナウイルス感染拡大のピンチに従業員が団結!健康経営が向上させたワーク・エンゲイジメント
他にも、「健康経営」に取り組み、離職率低減や社員全員の健康増進、“憧れられる企業”への成長など、それぞれの企業が抱える課題に向き合い、目指す姿に進化する例はたくさんあります。健康経営優良法人2020の認定企業200社が実際に行なった取り組みやそれに至った背景などを詳細に取り上げたレポートも公開していますので、ぜひ参考にしてみてください。
●参考レポート
健康経営優良法人2020インタビュー「Voice Report 200th the interview」
また、企業の「健康経営」を後押しする「健康経営アドバイザー」として企業(経営者)に「健康経営」の必要性や利点を伝え、実際の取り組みをサポートするパッケージを提案しているアクサ生命静岡支社藤枝営業所の榑林(くればやし)玉美は、健康経営に取り組んですぐに見出せるメリットとして、
「例えば新しく入ってきた従業員がすぐに離職してしまうような職場の場合、先輩社員のみなさんは新しく後輩社員が入社するたびに何度もイチから仕事の仕方や職場のルールを教えないといけない、という問題に直面することがあります。これでは少なからず負担になったり、生産性も一時的に下がってしまうことも考えられます。
そうした職場が『健康経営』に乗り出し、すべての従業員が気持ちよく働ける環境が整えば、結果として会社への定着率が上がり、離職者が出る頻度が下がる可能性が考えられ、先輩社員の負担も軽減されると期待できます。こうしたよい影響と好循環が従業員にとって『健康経営』に参加して初めて感じるメリットになると確信しています」と語りました。
●参考記事
「健康経営」は従業員の“名もなき仕事”を減らす機会にもなる~健康増進や生産性向上だけじゃない、現場のメリットとは?~
さて、ここまでの話をきっかけに「健康経営」に関心を持ち、自社でも採用しようと考え始め、「しっかりとした組織体制や取り組みの内容を決めよう」と考えたひともいらっしゃるかもしれません。
そうした際に注意しておきたいのは、理想を追い求めすぎて取り組みが複雑になったり、ハードルが高くなりすぎて「もう続けられない!」と道半ばになってしまうような取り組みにしないことです。
むしろ、健康経営に取り組む際のコツは、最初から身構えすぎないこと。
「お金を掛けなくてもはじめられます。スモールチェンジからはじめましょう。仕事の動線に取り入れ無理なく実施しましょう」の3つがキーポイントだと言えます。
そのため、一度職場で話し合って、自分たちが「ちょっと頑張れば達成できそうなこと」から始めてみるのが成功のカギとなります。「やってみたらできた!」と、小さな成功体験を積み上げていくことも「健康経営」の楽しみ方のひとつなのです。
ただ、「その話し合いのきっかけが掴みにくいんだよね」という場合もあるかもしれません。
では、実際に取り組みを進めている企業ではどのように始めたのか?先行企業にお話しをうかがった記事もありますので、ぜひ参考にしてみてください。
●参考記事
健康経営に取り組み、「健康経営優良法人2020(中小規模法人部門)」にも認定された株式会社 西田製作所の民社長と得永副社長
また、社長や健康経営を推進する担当者が「ここから始めよう!」と決めたことが必ずしもいい結果につながらない場合もあるので、事前に注意点を押さえておくのもおすすめです。
●参考記事
受動喫煙防止法への対応をきっかけに健康経営を始めてみませんか?
「人生100年時代」がすっかり定着した今日、「こころの健康」「からだの健康」「お金の健康」はますます大きな価値を持つものとして認識され始めています。それらをよりよく保つには、職場や仕事もまた大きな価値を持ちます。その価値の中にはこれまでとは少し異なる、「経営者・従業員の双方にとって繋がっていたいコミュニティとしての意味」も含まれるようになるでしょう。
そのような「人生100年時代」のコミュニティ全体のあらゆる健康を下支えするため、アクサ生命は「健康経営」の実践をサポートする活動を続けています。
*「従業員を対象とした日常の悩みやストレスに関する実態調査」
調査対象:日本全国の20代以上の男女1,030名
実施期間:2020年7月
調査方法:インターネット調査
**「健康経営」は特定非営利活動法人 健康経営研究会の登録商標です。
アクサ生命による『社長さん白書』は、2004年より全国の中小企業経営者の皆さまに対面で実施している意識調査です。9回を数える2020年は、コロナ禍の影響もあり、これまでの「対面のみ」をあらため、webアンケートも並行して行ないました。
今回は、「中小企業経営者が考える 『経営者の未来づくり』」をテーマとし、「令和の経営環境について」、「経営者が抱える現代の課題」、「社長個人の未来づくりについて」、「健康経営の取り組みについて」といったテーマの質問をしました。調査結果からは、従業員の健康づくりを重要な経営課題と位置づけて生産性や収益性の向上につなげる「健康経営」の認知度の高まりが顕著になる一方、経営者の就業不能についての備えや事業承継については難しい舵取りが続いているという現状が浮き彫りになる結果もありました。
また、今回は、経営者の配偶者を対象に「社長の奥さま白書」と題したデジタルアンケートと、後継者の方へのアンケート調査も併せて実施しました。
■調査概要
社長さん白書
調査期間 : 2020 年 7 月~9 月
調査方法 : 対面およびウェブアンケート
調査対象 : 全国 47 都道府県の中小企業経営者
回答者数 : 5,303 人
奥さまアンケート
調査期間 : 2020 年 7 月~9 月
調査方法 : ウェブアンケート
調査対象 : 全国 47 都道府県の中小企業経営者の配偶者、パートナー
回答者数 : 328 人
後継者アンケート
調査期間 : 2020 年 7 月~9 月
調査方法 : ウェブアンケート
調査対象 : 全国 47 都道府県の中小企業経営者の後継者
回答者数 : 47 人
あなたの会社のさまざまな課題に専門スタッフがお応えし、「100年企業」を目指すためのサポートをいたします。
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