2023年04月03日 | 会社経営のこと -Business-
本稿では、神奈川大学 経営学部の3名と、管工機材、住宅設備機器の販売等を展開する「橋本総業株式会社(東京・中央区)」の阪田貞一 代表取締役社長との交流の様子をレポートにしてお伝えします。
橋本総業株式会社のはじまりは1890年、明治23年まで遡ります。近代水道設備の取り扱いや「橋本式水道自在器」の開発など、創業当初から先駆的なビジネスを展開していた同社は、2020年10月、130周年を迎えました。
日常生活で意識を向けることはそう多くない設備機器ですが、人々の快適な暮らしを支える存在であることは言うまでもありません。同社では、「私たちは、人々の生活に欠かすことのできない設備商品を扱う企業として、設備商品の流通とサービスを通じて、快適な暮らしを実現することをミッションとして掲げ、これに向けて日々努力を続けることで社会に貢献できる企業を目指している」とのこと。
他方、扱う商材がプロ向けであるため、社員研修の充実は欠かせないとし、設備施工の実地研修ができる研修センターの運営、各種研修の実施や資格取得講座にも注力するほか、業界の歴史や経営について学ぶ機会を取引先企業の人材にも提供するなど、「人を育てること」にも余念がありません。
そんな会社が、「関わる人達の存在は重要である」と考えるのは自然なこと。2016年に健康経営ニュースの配信を開始したのを皮切りに、2017年に健康優良企業「銀の認定」、2019年には同「金の認定」を受け、2020年から3年連続で健康経営優良法人(大規模法人部門)、2023年にホワイト500に認定されたのも納得です。さらに、阪田社長ご自身は、当時では珍しい「大企業からオーナー会社への転職」を経験された人物でもあります。
そのような企業の社長とお話しができれば、大学生が「働く上で大切なこと」を考えるきっかけが得られるはず、ということで訪問を打診したところ、快く迎え入れてくださいました。
学生達にとって、「大企業の代表取締役社長」との対話は初めてのこと。事前にWebサイトや資料を見ながらしっかりと準備してきたようで、緊張しながらもさまざまな質問を投げかけていきました。
最初は、「なぜ、橋本総業では自立(自律)人材へと進化することが大切だと考えているのか?」という、同社の人材育成にまつわる質問です。
阪田社長は、2014年に東京証券取引所に初めて上場したころを振り返り、
「一般的に、オーナー企業は、オーナーの強いリーダーシップのもとで経営方針や経営のあり方などを浸透させ、その声に導かれながら社員が団結して力を発揮するケースが多い。上場前の橋本総業もそうした側面があり、取引先などからは『社員のみなさんは元気でキビキビと働いている。いい会社だ』との評判をいただいていた。一方で、もしオーナーのリーダーシップがなくなると、社員もうまく力を発揮できなくなる側面もある。
一方、上場企業は、株主をはじめさまざまなステークホルダーに叱咤激励を受けることになる。時には臨機応変に、自分の立場で『何をすべきか?』を考えたり、議論して行動に移したりするような、まさに自立(自律)的な振る舞いが求められる。そうした意味で、上場を機に『自立(自律)人材に進化していこう』と社内に浸透させるようになったのがきっかけだった」と、答えました。
今日、正解がひとつとは限らない、非常に複雑な時代になっていると言われます。そのため、問題解決の力だけでなく、問題そのものを発見する力も求められるようになりました。そのような時代には、まさに「自立(自律)人材」が求められている、と言えます。
これについて、学生からは、「授業やゼミなどで、ことあるごとに『今ある課題を解決するだけではなく、課題そのものを見つける力を培うことが大事だ』という話が出てくる。社長の話を聞いて、そうしたところは大学でも社会でも同じなのだと感じた」といった感想が聞かれました。
前述の感想に加え、学生からは、「答えがない時代だと言われているが、答えがないということは終わりがないことと同じだと感じる。そう思うと漠然とした不安を感じる」との声も聞かれました。そこで出された質問が、「働くとはどういうことか?仕事の意義とはなにか?」ということです。
阪田社長は、
「仕事、ひいては企業において重要なのは、まずは『しっかり儲けを生むこと』。それは、単純にお金を稼ぐということだけでなく、社会の中の誰かが商品やサービスに価値を見出してくれたという意味を伴うからだ。誰かに価値を見出してもらえるものを扱って初めて儲けが生まれ、それが大きくなればそれだけ給与として社員に還元できるし、税金を納めるという形で社会貢献も叶う。
今日、『健康経営』のほか、会社が社会的責任としてやるべきことはさまざまに挙げられるが、それを実践するためにも、まず足元が揺らいではいけない。私たちの会社は、『設備商品を扱う企業として、設備商品の流通とサービスを通じて、快適な暮らしを追求すること』をビジョンに据えているが、それがどう収益に結びつくか考えた時、一人ひとりの力が大事だ」と、経営論も踏まえた考え方を示しました。
これを受けて出てきたのが、「そこで、『健康経営』はどう役に立つか?」という今回の本題とも言える質問です。
これについても阪田社長は、
「健康な状態でなければ『儲け』を生み出すためのよい循環に向かおうとする気持ちが湧いてこない。だから、会社にとっても、社員一人ひとりにとっても、健康は最も大事だ。
新入社員を迎え入れるたびに私は、『当社はいわゆる営業会社だから、生活が不規則になりやすいかもしれない。だからこそ、常に健康を心がけないといけない』と強く伝えてきた。希望をもって入社し、『頑張ろう!』と意気込んでいる人は多いが、むしろ私は『体を壊してしまうと、もともと持っている実力だけでなく、自分でも気づかない秘めた能力を発揮する機会すら失ってしまうかもしれない。だから、何よりもまず健康を。自己管理する気持ちを強く持っていてほしい』と伝えるようにしている。本当に真剣にそう考えているし、会社としてもできる限りのバックアップする環境を整えるよう取り組んできた」と、力を込めて語ってくれました。
さらに阪田社長は、
「近年、離職や休職による人手不足の問題や生産性の向上が叫ばれるが、それも元をただせば『健康』があってこそ改善ができるものだと思う。会社は社員の健康を維持できる体制とはどういうものかを考え、実践する必要がある。橋本総業の場合は、『ホワイト500』の認定要件に示されている事柄を満たすよう取り組んだ。また、健康診断の受診はもちろん再診の受診促進や有給休暇の確実な取得等ができるようマネジメントもしている。
一方で、健康を気遣う意識や、健康診断の受診や再診をするかどうかは個人の内面のことでもある。ここは一人ひとりにも考えてほしい」と、「健康経営」における社員との協働の重要性に触れました。
阪田社長の話を受けて学生が発表したのが、「自分らしく働くために」をテーマにした研究の内容です。日本初となる「健康経営論」を受講して学ぶ中で、「健康を意識するとはどのようなものか?」を探るべく、ウェアラブル端末を一定期間に実際に身につけて歩数や睡眠時間を可視化して収集し、その体験についての印象等をまとめた興味深い内容でした。
3人が所属するゼミのグループでは、「会社全体に『健康経営』を浸透させるにあたり、さまざまな意見があると思う。それでも、健康に意識を向ける人々が増えれば、より日本の会社の『健康経営』を推進することができるのではないか?」という着眼点から、「若いうちから健康に意識を向けるような生活をし、大学生なりに自分に対して『健康経営』を実践していれば、いざ就職しても会社の取り組みを受け入れてうまく相乗効果を発揮できる存在になれるのではないか?」と考えたとのこと。
この調査の結果、「ウェアラブル端末で健康状態を把握し、体と心と社会的な健康が等しく充実していれば、大学生活も好転するとわかった」と言い、「日本企業において『健康経営』を発展させるには、大学のころからそうした考えに触れ、できることを実践するように学生側が取り組んでいくことも一助になるのではないか?」と述べ、発表を終えました。
これに対し阪田社長は自身も体調管理のためにウェアラブル端末を利用していると伝え、
「先ほどから『健康は大事』と言ってきたが、私は『体と心の健康のどちらがより重要か?』と問われたら『心の健康だ』と答えるほどその重要性を認識している。たとえば、人は恋に落ちた時、気分が高揚し、相手に関心を持ってもらおうといつも以上に努力するし、頑張ろうというモチベーションが生まれてきやすいと思う。
では、仕事において気持ちが高揚して頑張ろうという考え方になるよう社員に促すにはどうすればいいか?きっと、『ああしろ、こうしろ』と言うより、そうなる環境を整えることが大事なはずだ。
大半の人はそうではないが、現実として心の健康が保てなくなり、体の健康も崩してしまう人はいる。そうならないようにできる限り支えることが会社側のおもな取り組みになるので、それを踏まえて社員側も一緒になって『健康経営』ができるようになれば心強い」と感想を伝えました。
加えて、「大学は入学した学生を育てる場所だが、会社では、社会人として働く上でのトレーニングは受けられるものの、その機会を得られる人もいればそうではない人も出てくることがある。その“違い”が生まれるボーダーラインのひとつには、“その人が持つ雰囲気”のような言語化しづらい事柄もあると言える。だからこそ、本当に健康が大事なのだ、と言いたい。そして、『心の健康』は第一だ」としました。
この阪田社長からの感想について、学生からは、
「会社側が環境を整えてくれたり、本気で支えようとしてくれていることが伝わってくると、働く側もそれに応えようという気持ちになると思う」という意見や、「人間関係を円滑にしたり、パフォーマンスを高めるためにも心の健康が重要だと知った」、「病気になる未来は想像がつかず、そうなって初めて考えることになるのだと思う。だから若いうちから健康について意識を向けることは大切で、これから就職する上で学生時代の経験とともに『健康』とどう向き合ったかも大切なアピールポイントになるのではないかと思った」との声が挙がりました。
ここで重要なのが、「心の健康を維持・増進するには、会社側はどんな支援ができるのか?」ということです。すでに社会人のひとはもちろん、未来の社会人である学生らにとっても、「何をしてくれるのか?」は気になるところでしょう。
これについて阪田社長は、
「たとえば、橋本総業には本社勤務だけでなく、各営業所で勤務する人もいる。各所の所属人数はそれほど多くはないので、人間関係が良好でないと、逃げ場がなくなってしまう。ストレスチェックを定期的に行い、その結果を見て、必要に応じて本社から人を派遣して現地を調べ、必要なマネジメントをするよう取り組んでいる。
一方、個々人が抱えるストレスについては、発散するためのトレーニングルームの設置やマラソン部等のグループ活動ができる機会を作るといった取り組みも続けている。こうしてリフレッシュする環境を作るのは大事なことだ」と取り組みを紹介した上で、
「経営者としては、『(福利厚生が充実している、ということにとどまらず)働きがいがある』と社員に感じてほしいと思っている。職場はお金を稼ぐための場所、というふうに考えると、30~40代あたりでふと、『私は何をやっているのだろう』と壁にぶち当たることもあるし、そのことを私自身も経験した。
そうした際に、『このためにやっているんだ!』と自分自身が思える何かを掴んでいれば、頑張りどころが見えてくるし、その先の働き方も変わり、それが評価されると自信とやる気になって評価もさらに上がる。そのように個人の意識と会社の方向性がある程度合わさっていれば、それは素晴らしいことだ。そうした『正の回転』が進むように取り組んでいく必要性を強く感じている」としました。
最後の質問は、阪田社長のこれまでの社会人生活に踏み込んだもの。「社会人生活で後悔しないためにどう決断をするか?」ということです。
阪田社長は、
「私は、新日本製鐵株式会社 (現:日本製鉄株式会社)という会社から社会人人生を踏み出した。技術職として入社したが、歳を重ねるにつれて仕事の内容が変わり、管理職になるころにはおもに労務や人事、マネジメントの仕事をするようになった。入社時に先輩社員だった人達も昇進し、肩書きが付いたり、出向先の役員になったりしているのを見るようになった。そうすると、『この先の社会人生活はこういうものだろう』と、予想ができるようにもなった。そして、『それで精神的な充実感が得られるか?』と、考えるようにもなった。そんな時、予備校時代から東京大学大学院を経て社会人になってもずっと仲が良かった現在の橋本総業ホールディングス社長と話す機会があり、『うちに来ないか?』と声をかけてもらった。
ただ、転職を決めた当時は、『転職なんてとんでもないこと』という風潮で、家族はもちろん親戚、会社からも随分と引き止められたものだ。
転職したらしたで、同期がひとりもおらず、『社長の繋がりで来た人』という立場だったこともあり、難しい部分も経験した。それでも、気力・知力・体力が抜きん出て充実していれば大丈夫だ、という言葉を胸に頑張って今に至る。
サラリーマン時代は『給与は空から降ってくるもの』というイメージだったが、こちらで働くようになってからは、『給与がどう支払われるのか?業績との関連性はどういうものか?』を知るなど、いろいろな学びを得た。結果的に、ひとりで2通りの社会人人生を送れたことはよかったと思う」と振り返った上で、これから就職して社会人人生をスタートさせる3人に向けて、
「1日の終わりに、その日の失敗の理由を分析したり、成功を喜んで浸ったりする機会を作ることをおすすめしたい。体験を頭の中で整理できるし、それを毎日ノートにつける習慣を続けると、1年も経てば人間の深みが出てくると思う。会社勤めをしていると、起きて活動している時間のうちほとんどが会社との付き合いになる。それは就業時間だけでなく、ふとした瞬間に仕事のことを考える時間も含めて、という意味だ。
結局のところ、自分は自分で守って進んでいくしかない。そのためにも健康、とりわけ心の健康をぜひ大切にしてほしい」とのメッセージを贈りました。
およそ2時間の訪問を終え、学生達はそれぞれ次のような感想を述べ、会を締め括りました。
「大学の講義で『健康経営』について学んだが、取り組んでいる企業の方のお話を聞き、企業にとって社員の"健康"とはどういうものなのか深く理解できた。また、『健康経営』だけでなく、自己実現には体の健康はもちろん気力・知力・体力が大事なことなど、本当にいろいろな学びがあった。やはり健康は積み重ねが大事。学生時代から心身ともに健康な状態を維持していくことが、今できる最善の行動なのではないかと感じた」(小西)
「もともと『健康経営』に興味があり、これに力を入れている会社を自分の目で見てみたいと思って参加したが、上場企業の社長と話す機会は初めてで、とても緊張した。印象に残った話はいくつもあるが、『自立型社員を目指していかなければならない。その中で体の健康や心の健康を自分で管理することが大切である』という話はとても心に響いた。今日の刺激を記憶にとどめて、今後に役立てていきたい」(吉田)
「『健康経営』を学び始めて、実際に会社でどういうふうに実践されているのか興味があったが、今日のお話を聞いてその一端を知った。就活でも生かしたい。希望先はまだ決まっていないが、周囲の環境のほか、なにより『自分が何をしたいか、自分は何を重要としているか』が大事だと理解した。それを決めて、進んでいきたい」(高瀬)
【編集後記】
上場企業のトップと面談する機会は、社会人にとってもそうないことです。そんな中、当日の朝、社長自ら「申し訳ないが、ひとつ前の予定の都合で約束の時間に少し遅れてしまうかもしれない」と気遣う連絡までいただきました。いかに学生に誠実に、真剣に向き合ってくださっていたかが伝わるエピソードです。
また、社長の転職にまつわるお話しをうかがい、「自分の人生を自分自身で経営する」という生き方の何たるか、人と人との縁のありがたさを教わりました。
アクサ生命が提唱する『健康経営アクサ式』は、通常の健康経営の範囲である健康管理・健康増進や心の健康だけではなく、夢や生きがいがあり、自分の居場所を感じられる「社会的な健康」まで含めた「人の健康」、あるいは「企業の健康」といった「トータルな健康」を実現することを目指し、従業員が幸せに活き活きと働くことができ、企業の永続的な発展につなげる取り組みです。アクサ生命では、この取り組みを応援し、成功に向けたお手伝いを続けてきました。
「興味はあるけれど具体的にどう取り組めばいいかわからない」「自分たちで取り組んでみたものの、行き詰まっている」といったみなさまも、ぜひお気軽にご相談ください!
「健康経営」はNPO法人健康経営研究会の登録商標です。
【関連リンク】
・健康経営アクサ式 - みんなと会社の未来を健康に。 | アクサ生命保険株式会社 (axa.co.jp)
・「健康経営アクサ式」に関するよくある質問はこちらから
AXA-A2-2303-2181/C0T
あなたの会社のさまざまな課題に専門スタッフがお応えし、「100年企業」を目指すためのサポートをいたします。
アクサ生命の商品・サービスについてはこちらの公式サイトからご覧ください。
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