終身医療保険とは?
定期との違いや選び方も解説
公開日:2025/12/10


一生涯の医療保障を得られる保険に終身医療保険があります。終身医療保険にはどのような特徴やメリット・デメリットがあるのか、定期型医療保険との違いや選ぶ際のポイントなどについて解説していきます。
終身医療保険の特徴
終身医療保険は、一生涯に渡って保障が続く医療保険です。日本には国民皆保険制度が導入されていますが、すべての医療費が保障されているわけではありませんから、その不足分をカバーするために民間の医療保険が活用されています。
終身医療保険の特徴について、一定期間だけを保障する定期医療保険との違いを確認していきましょう。
終身医療保険と定期医療保険の違い
終身医療保険と定期医療保険は、保険期間が異なります。終身医療保険は、その名の通り、一生涯を通じて医療保障が得られる医療保険です。保険料は定期型よりも割高になる傾向がありますが、保険料が途中で上がることはなく、一生涯を通して一定金額なので計画的に払い込めます。
一方の定期医療保険は、一定期間だけを保障する医療保険です。10年や20年といった一定年数を保障する「年満了」と、60歳や65歳など契約時に決めた年齢までを保障する「歳満了」のタイプがあります。定期医療保険の保険料は終身医療保険よりも割安ですが、更新の度にその時の年齢に応 じて保険料が更新され、徐々に保険料が上がっていきます。また、一定の年齢以上になると契約年齢上限の関係で保険の更新ができなくなる点には注意が必要です。
| 終身医療保険 | 定期医療保険 |
保険料 | 高めだが、加入時のまま変わらない | 加入時は低めだが、更新ごとに上昇する |
保険期間 | 一生涯 | 一定期間のみ |
解約時払いもどし金 | なし(あるものもある) | なし |
更新 | なし | あり |
保険料の支払方法
終身型医療保険の保険料の払込方法には、保険料を短期で払い終える「短期払」と、生涯を通して保険料を支払う「終身払」に分けられます。保険会社によっては、一時払を選択できる場合もあります。
短期払
短期払は、10年や20年などの一定期間や、60歳、65歳、70歳などの一定年齢までに保険料の払込を終える支払い方法です。働いて収入がある間に保険料を払い終えて、退職後はできるだけ家計の負担を軽くしたいと考える人に適しています。
月々の保険料は、一生涯保険料を払い続ける終身払よりも短期払の方が高めに設定されていますが、支払いを終えてしまえばその後はどれだけ長生きしても保険料の支払いは不要です。終身医療保険の保険料を短期払で払い終えた後は、保険料負担を気にすることなく、一生涯の医療保障を確保できるため、老後の安心感につながるでしょう。
終身払
終身払は、一生涯にわたって保険料を払い続ける方法です。保険料は原則として一定で、途中で上がることはありません。若いうちに加入しておけば割安な保険料で加入できますし、その保険料の まま一生涯にわたって保障を継続できます。
終身医療保険の終身払いは、加入時の保険料が短期払いよりも低いため、月々の保険料を抑えたい人に向いています。ただし、定年退職後、収入が減った後も保険料の払い込みが続きますし、長生きするほど保険料の総支払額が増えることには注意が必要です。一方で、魅力的な保険商品が発売された時や暮らしの変化に合わせて、柔軟に保険の見直しをしたい人には、それまでに支払う保険料を抑えられるというメリットもあります。
終身医療保険のメリット
終身医療保険に加入するとどのようなメリットがあるのでしょうか。また、注意すべきデメリットについても確認しておきましょう。
一生涯にわたり医療保障を受けられる
終身医療保険は、一生涯の医療保障を備えられることが大きなメリットです。一般的に病気やケガのリスクは年齢を重ねるほど高まりますが、定年退職後にまとまった金額の医療費を負担することは、家計の大きな負担となります。また、高齢になってからの医療費負担で大切な老後資金が失われることは、心理的にも大きな負担となるでしょう。
若いうちに終身医療保険に加入しておけば、保険料が抑えられますし、病気やケガをしても、入院給付金や手術給付金を受け取れるので、医療費負担を減らせます。治療の選択肢も広がるでしょう。公的医療保険の自己負担額を補完できるように、終身医療保険で備えることを検討しましょう。
加入時の保険料が変わらない
終身医療保険では、加入時の年齢で保険料が決まり、その保険料がその後もずっと続きます。手頃な保険料で一生涯の医療保障を得られますし、長期的に保険料の支払い計画を立てやすい点もメリットです。特に若いうちに加入すると保険料が安く、高齢期になってもそのままの保険料なので払い込み負担が軽減されます。
定期医療保険のように、更新のたびに保険料が上がる心配がありません。また、長期的にみても一定の保険料で一生涯の医療保障で備えられる点は安心感があるでしょう。
終身医療保険の注意点
終身医療保険は一生涯の医療保障が得られるため、一度加入するとそれで安心してしまい、保障の見直しをする意識が低くなりがちです。そのため、年齢に即した保障内容になっていないケースがあります。
必要な保障は、医療技術の進歩のほか、年齢や家族構成、ライフステージなどにより変化していきます。終身医療保険に加入していても、数年に一度は、保障内容が適切か確認するようにしましょう。
定期型よりも保険料が高くなりやすい
一生涯にわたる保障を得られる終身医療保険は、一定期間だけを保障する定期医療保険 よりも加入当初の保険料が高めな傾向があります。ただし、定期医療保険は更新の度に保険料が上がり、一定年齢になると更新ができなくなる商品もあるため、一生涯の保障を備えたければ、終身医療保険を選ぶと良いでしょう。
加入を後回しにすれば、年齢が上がるにつれて保険料が上昇します。また、健康状態が悪化すれば加入できなくなる可能性がありますし、加入できたとしてもさらに保険料が上がる可能性があります。早めに加入することで、比較的安い保険料を一生涯継続できることを知っておきましょう。
終身払だと保険料負担が続く
当面の保険料負担を抑えたい場合には、保険料を終身払にすることで、短期払よりも月額の保険料を抑えられます。ただし、終身払を選んだ場合は、一生涯に渡って保険料を支払うことになります。老後の生活費に不安がある場合には、短期払を選択して定年退職までに保険料の支払いを終えることも検討しましょう。
人によっては、住宅ローンの返済や教育費負担などが重なる現役世代よりも、退職金を受け取って住宅ローンを完済し終えた老後の方がかえって余裕がある場合もあります。その場合は、無理して短期払を選ぶよりも、終身払いの方が向いています。ご自身の家計やライフプランを考えて、家計にあった支払方法を選択しましょう。
解約時払いもどし金はない商品が多い
終身医療保険には、一般的に解約時払いもどし金がありませんが、その分保険料が安めに設定されています。掛け捨てになるため惜しいと思う人もいるかもしれませんが、手頃な保険料で一生涯の医療保障を得られるというメリットがあります。
死亡保障の終身保険を解約すると解約時払いもどし金を受け取れるケースが多いため、終身医療保険も同様に解約時払いもどし金を受け取れると思いがちですが、混同しないように気を付けましょう。詳しくは保険会社の約款をご確認ください。
終身医療保険を選ぶ際のポイント
終身医療保険を選ぶ際のポイントについて解説します。後から失敗したと思わないために各ポイントを確認していきましょう。
加入目的を明確にする
医療保険は、一般的に、ケガや病気の種類にかかわらず幅広く保障を得られます。多くの場合、入院日数に応じて支払われる入院給付金と、所定の手術を受けた場合に受け取れる手術給付金が主契約です。
例えば、がんや三大疾病など特定の病気に対して手厚く備えたい場合などは、特約を付加して保障を上乗せすると良いでしょう。
なお、保険商品や保険会社により対応している特約が異なります。どのような特約が選べるのか確認しておきましょう。
定期型と比較する
終身医療保険 と定期医療保険がありますが、どちらがご自身に適しているのかをよく比較して判断する必要があります。終身医療保険と定期医療保険では、保険期間と保険料が異なります。
一生涯の医療保障が欲しい場合は終身医療保険を選択します。加入時の保険料は定期医療保険よりも高めですが、加入後は保険料が一生涯変わりません。一定期間のみ手厚い保障をつけたい場合は定期医療保険を選択しましょう。定期医療保険の保険料は若いうちは低めに設定されていますが、更新のたびに高額になっていく点には注意が必要です。
入院給付金の詳細を確認する
入院給付金は、病気やケガで入院した場合に支払われる給付金で、入院1日当たりに受け取れる入院給付金日額は、一般的に5,000円、1万円、2万円などに設定されています。
医療保険はそもそも、公的医療保険ではカバーされない自己負担額に備えるために加入します。入院給付金をいくらにするか決める際には、公的医療保険の自己負担分と、公的医療保険の保障の対象外になる差額ベッド代や食事代をもとに計算しましょう。
厚生労働省の「主な選定療養に係る報告状況」によると、1人部屋から4人部屋 を合わせた差額ベッド代の全国平均額は、1日当たり平均6,714円です。入院時の食費の自己負担額は原則として1食当たり510円なので、1日3食で1,530円となります。差額ベッド代の6,714円と合わせて1日当たりに必要な金額の目安は8,244円になります。
差額ベッド代は病院ごとに異なりますし、1部屋当たりの人数によっても差がありますが、入院日額を1万円に設定すると、公的医療保険の対象外のものも全国平均レベルでは概ねカバーできるといえます。
保障の対象を確認する
保険会社所定の手術を受けた場合、原則として手術給付金が支給されますが、入院を伴う手術のみ支給される商品と、入院を伴わない手術でも支給される商品があります。
入院したことが支給条件になっていると、日帰り手術では給付金が受け取れません。日帰り手術を受ける可能性はゼロではないため、契約前に支 給条件を確認することが大切です。
また、通院保障が付いている医療保険でも、一般的に単に通院しただけでは支給されない保険が多く、入院給付金が支給されるような入院をした後の通院が対象です。なお、医療保険によっては入院前の通院も保障対象になるものがあります。
支払限度日数を確認する
入院給付金では通常、1回の入院に対して給付金が支払われる日数に上限が設けられています。一般的に30日・60日・120日など保険会社が指定する日数の中から選びます。
また、通算の支払限度日数も設けられており、700日・1000日など保険会社により異なりますが、上限があるのが一般的です。
厚生労働省の「令和6(2024)年医療施設(動態)調査・病院報告の概況」によると、近年、入院日数は短期化されている傾向にあり、入院患者の平均入院日数は25.6日です。
しかし、これは全ての疾病や全年齢のデータであり、病気やケガの状態や年齢によっては、さらに入院日数が長期化する可能性もあります。
特約を検討する
終身医療保険は、多くの場合、幅広い病気やケガで入院や手術をした時に、給付金を受け取れます。特に気になる疾病や、手厚くしたい保障については、特約を付けて自分に合った保障内容にカスタマイズしましょう。
選択できる特約の種類は保険会社によって異なりますが、代表的な特約については以下の図表をご覧ください。ご自身のニーズにあった特約を上乗せして、過不足のない保障設計を行いましょう。
特約名 | 保障内容 |
先進医療特約 | 全額自己負担となる先進医療の技術料負担に備えられる |
がん特約 | がんによる入院や治療費を手厚く保障。がんと診断された時にまとまった一時金が受け取れる保険商品もある |
女性疾病特約 | 乳がんや子宮関連疾患など女性特有の病気で入院・手術を受けた場合に手厚く保障 |
三大疾病特約 | がん・急性心筋梗塞・脳卒中の三大疾病に備えられる ※保障対象になる疾病名や条件は、商品や会社によって異なる場合がある |
保険料払込期間を検討する
終身医療保険では、保険会社によっては、保険料の払込期間を選べる場合があります。一つ目は「終身払」で、保険料を一生涯払い続ける方法です。1ヶ月当たりの保険料は安くなりますが、一生涯保険料の支払いが続きます。二つ目は「短期払」で、保険料の支払いを短期間で終える方法です。1ヶ月当たりの保険料は「終身払」と比べて高くなりますが、60歳や65歳、70歳などで払い終えられるので、老後の負担を軽減できます。三つめは「一括払」です。全期間の保険料を一度にまとめて支払う方法です。将来的な保険料を考えなくてよくなりますが、まとまった資金が必要になります。なお、すべての商品で一括払を選択できるわけではないため、事前に確認しましょう。
終身払が向いている方は、今の保険料負担を少しでも抑えたい人、今後も柔軟に新しい保険への見直しを考えたい人です。短期払が向いている方は、今支払う保険料が多少高くなっても、収入が多い時期に払い終えて老後の負担を軽くしたい人です。それぞれの保険料の違いや今後のマネープランを考えて選びましょう。
終身医療保険がおすすめな人
終身医療保険は幅広い人におす すめの保険ですが、中でも特におすすめなのは、一生涯の安心を重視したい人、若いうちに加入して保険料を抑えたい人、更新による保険料の上昇を避けたい人です。それぞれの理由について詳しくお伝えします。
一生涯の安心を重視したい人
老後の医療保障を確保しておきたい人には、終身医療保険が向いています。高齢になるほど病気や入院のリスクが増える傾向がありますから、退職後の老後の家計にとって医療費は大きな負担となりかねません。
持病を抱えたり、入院や手術をしたりしてからでは医療保険に加入しにくくなります。一方、若くて元気なうちに医療保険に加入しておけば、幅広い選択肢の中から自分に合った医療保険を選びやすくなります。老後に医療費の不安をできるだけ残したくないと考えるなら、終身医療保険が向いているでしょう。
若いうちに加入して保険料を抑えたい人
終身医療保険の保険料は、年齢や性別によって決まっています。20〜30代など若い時期に加入していれば、年齢を重ねてから加入するよりも安い保険料で加入できますし、加入時の保険料のまま保障を継続できます。
健康だからまだ医療保険の必要性を感じないという人もいるかもしれませんが、医療保険の加入時には健康状態の告知があります。健康状態が悪化してからでは医療保険への加入を断られる場合がありますし、加入できたとしても特定の部位や疾病が保障の対象から外れたり、保険料が割増になったりする可能性があります。
終身医療保険には若くて健康なうちに加入して、お手頃な保険料で保障を継続するのが理にかなっています。
更新による保険料上昇を避けたい人
一定の期間だけを保障する定期医療保険では、更新を迎える度に保険料が上がります。更新の時期が近づくと保険料の値上がりが気になるという人は、保険料がずっと変わらない終身医療保険に見直すことを検討しましょう。
同じ年齢で加入時の保険料を比較すると、終身医療保険の方が定期医療保険よりも高めな傾向がありますが、終身医療保険であれば保障を一生涯続けられる安心感がありますし、保険料が途中で上がる心配がないため、支払い計画を立てやすくなります。将来的な保険料の値上がりを避けたい人には、終身医療保険が向いているでしょう。
ポイントを押さえて終身医療保険を検討しよう
終身医療保険には、医療保障を一生涯に渡って受けられる安心感があります。定期保険と違って更新が無く、途中で保険料が上がる心配もありません。加入を検討する際には、定期医療保険との違いをよく確認した上で、保障を上乗せする特約の種類、入院給付日数や入院給付日額、保険料の支払い方法など、いくつかのポイントを押さえると選びやすくなります。
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■記事の監修者


名前:氏家祥美(うじいえよしみ)
保有資格:AFP、2級FP技能士、キャリアコンサルタント
経歴:2005年にFP会社の立ち上げに参画、2010年よりFP事務所ハートマネーの代表に。家庭科の教科書で経済パートを執筆するほか、大学の非常勤講師、企業や自治体等でリタイアメント世代向けに講師や相談を担当。幅広い年代にむけて中立な立場で金融リテラシーを普及している。
AXA-A2-2511-0823/9LJ
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